シネマ大国フランスの映画館レポート。人口が日本の半分なのにスクリーン数はほぼ1.5倍

1971年に開館したSaint-André-des-Arts

パリとフランスにまつわる情報サイトTRICOLOR PARISの主宰・荻野雅代さんと桜井道子さんおふたりが、毎月交替でフランスから日々の暮らしをご紹介。第12回目は、桜井さんがフランスの伝統を感じる映画館について紹介してくれました。


幅広い世代に愛される
フランスの映画館たち


1938年に開館したLe Champo
1938年に開館したLe Champoは、フランソワ・トリュフォーやクロード・シャブロルにも愛された映画館。私が黒澤明の『羅生門』を初めて見たのはここ。

映画が発明された国、フランスでは、想像どおり、映画は大切な娯楽の1つで、幅広い世代に愛され続けています。人口が日本の半分なのに、スクリーン数の合計は日本のほぼ1.5倍。さらに、封切りされる映画の数もずっと多いです。もちろん時代の流れには逆らえず、配信サービスを利用して自宅で映画を見る人や、大手のシネコンも増えました。

一方、名画座やミニシアターの数は全盛期から比べれば減ってはいるものの、まだまだ伝統として守られています。とりわけパリは、街のサイズを考慮しても、とにかく映画館の数がとても多い街です。

Écoles Cinéma Clubの写真
1977年に開館し、何度か名前を変えながら生き延びているÉcoles Cinéma Club。2017年に女優イザベル・ユペールの夫でプロデューサーのロナルド・シャマが買い取り、オーナーに。
Écoles Cinéma Clubに飾られていた映画『タクシードライバー』のポスター
Écoles Cinéma Clubに飾られていた映画『タクシードライバー』のポスターがいかにも場所にぴったりでつい写真に撮ってしまった。1976年公開、マーティン・スコセッシ監督、ロバート・デ・ニーロ主演のこの映画は、カンヌ映画祭の最高賞、パルムドール受賞作。
1973年開館のStudio Galande
1973年開館のStudio Galandeは、通常の映画のほか、70年代のカルト映画『ロッキー・ホラー・ショー』を未だに常時上映、しかも金・土の夜は俳優たちのパフォーマンス付きでの上映を1978年から続けている、ある意味すごい映画館。
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実は、黒澤明、小津安二郎、溝口健二など、かつての日本映画を代表する監督たちの作品を、私が初めて映画館で見たのはすべてパリでした。インターネットがない90年代半ばの留学時代、フランス語に囲まれた生活にくたびれて、日本語を聞きたい一心で日本映画がかかっている映画館を探したものです。

そう言うと驚く方も多いかも知れませんが、パリには現役で頑張っている名画座がいくつもあり、日本の昔の名作が映画館のスクリーンで上映される確率は、もしかしたら日本よりもパリのほうが高いかもしれません。

1971年に開館したSaint-André-des-Arts
1971年に開館したSaint-André-des-Artsは、当時から無名でも才能のある監督の作品を他に先駆けて上映することで知られた映画館。オーナーが変わっても、そのエスプリは受け継がれている。
1965年開館のNouvel Odéon
1965年開館のNouvel Odéon。パリ市、イル・ド・フランス地方、そしてフランス国立映画センターの援助のもと、2010年にリニューアルされた。そんなところからも、できる限りミニシアターを残したいという熱意が感じられる。
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パリで、独立系の小さな映画館が最も多く残っているのは、パリ大学を始めとする高等教育機関が集中する学生街カルチエ・ラタン、そして、昔から文化人たちが集ったサンジェルマン・デプレです。1~2スクリーンほどの、小さな小さな映画館たち。

設備は少し古びているかもしれないけれど、それぞれに歴史とストーリーがあり、支え続けてきた常連客や映画人たちがいるんだな、と思うと、愛しい気持ちでいっぱいになります。そんな映画館が、永遠に生き残りますように……。

文/桜井道子

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