〈クウネル・サロン〉プレミアムメンバーの菜木のり子さんを「ときめかせる」ものは、素敵な言葉との出会いだそうです。それについて改めたのは、昨年行われた向田邦子展がきっかけだったとか。
「ことば」に意識を向けたら
――自分に似合う、自分を引き立てるセーターや口紅を選ぶように
言葉も選んでみたらどうだろう… ――
50代が始まる頃、向田邦子さんのこのフレーズを目にしてから「ことば」に意識を向けるようになりました。
それからは聞いたことのない単語や新鮮な言い回し、素敵なフレーズなど気になったものはすぐにスマホのメモやノートに書き留め、本を読んでも「ドッグイヤー」をするか付箋を貼り、電子書籍にも色とりどりマーカーが引かれるようになりました。
「私の気持ち」にぴったり合う「ことば」を探して
素敵な表現や言葉に出会うといつも思うんです。
なぜこんな表現が生まれるのか、何を見て感じているとこんな美しい言葉が紡げるのかと。風景や、温度、感触、空気までもが手に取るように伝わってくるような表現は好奇心を刺激し私の中で言語化できずにいる「気持ち」を「言葉に」変えて外に連れ出す手伝いをしてくれるから、もっともっと新しい「ことば」に出合いたくなってしまうんです。
向田邦子展で出合った言葉
だから「ことば」を探しているとわくわくが止まりません。去年。表参道のスパイラルホールで開催されていた「向田邦子没後40年特別イベント『いま、風が吹いている』」に行きました。
そこでまたひとつ、「ことば」との出合いが……。会場の吹き抜けには「風の塔」と呼ばれる塔がありました。 長いロール紙に向田作品から選んだ言葉の断片がプリントされています。滑車でその紙が一番上まで持ち上げられ、時折、フレーズごとに切り離され、上から舞い落ちてくるという仕掛けになっていました。その滑車を見上げていた私のもとにハラハラとメッセージが落ちて来ました。
―― 自分らしい表現 自分らしい言葉を豊かに使えるというのが、
一番豊かな生活を送ったということ ――
大好きな向田さんからの「ことば」についての新しいメッセージでした。「ことば」に興味を持ってから私のもとに無造作に探し集められた沢山の言葉達は、一見カオスのように見える場所で、出合い、組み合わさって形になり私らしい「ことば」や「表現」を作り出してきてくれている気がします。
それをあれこれ使ってみることで更にブラッシュアップされ、より「わたし風」になっていくその感じは、服をコーディネートする工程にとても似ています。私のことば探しは宝探しなんです。
今日も素敵な「ことば」に出会えるんじゃないかって思うと、もうそれだけでなんだかわくわくな一日がすごせてしまうのです。