悲劇の王妃マリー・アントワネット、内なる情熱を秘めた王子フェルゼン……魅力的な脇役たちのセリフも光る!『ベルサイユのばら』の名言。

『ベルサイユのばら』池田理代子

「フランス革命は『ベルばら』で学んだ」とは、マチュア世代の合言葉。それほどまでに影響が大きかった漫画です。大人になって改めて感じる珠玉の名言を、湯山玲子さんが解説します。

私たちの乙女心に刺さったあのシーンとともに『ベルサイユのばら』の名言を味わいましょう!/オスカル編 からの続きです。

教えてくれた人

湯山玲子/ゆやま・れいこ

著述家・音楽プロデューサー

2023年に東京各地で行われた多発的コンサート『東京のうた』を書籍化。本や漫画、映画を通じて自由に語り合う『ワルい子のためのブッククラブ』も会員募集中。

悲劇の王妃はダイアナ妃を彷彿 !?「王妃マリー・アントワネット」

政治的策略のもと、オーストリアからわずか14 歳で、のちのルイ16 世となるフランス王太子に嫁いだマリー・アントワネット。ロイヤルファミリーに嫁ぎ、悲劇の王妃となったダイアナ妃とどうしても重なります。

『ベルサイユのばら』の中でも描かれ史実であった“首飾り事件”のスキャンダルを思うと、彼女はマスコミの暴力やパパラッチに悩むセレブの苦悩を、歴史的に最初に体験した人なのかもしれません。幼くして権力を手にし、フランス王室の財政を危機に陥れた張本人として悪名高き彼女ですが「生きた心をもったひとりの女性です」と言う言葉は心の底から発した紛れも無い真実。

『ベルサイユのばら』池田理代子

『ベルサイユのばら』全14巻/集英社マーガレットコミックス Ⓒ池田理代子プロダクション

「わたくしは王妃であるまえに
人間です
生きた心をもった
ひとりの女性です!!」

意を決し、フェルゼンとの不倫やポリニャックとの癒着に苦言を呈するオスカルに向けアントワネットが語った言葉。異国に嫁いだ寂しさや初めての恋に出会ったのに成就できない辛さ。その虚しさを忘れるために、遊び歩かざるを得なかったという王妃の慟哭的セリフ。このあたり、ダイアナ妃ともオーバーラップ。

今の世なら銀座の№1ママ& 稀代のフィクサー「ポリニャック伯夫人」

そのマリー・アントワネットを操り、栄華の極みを実現したのがポリニャック伯夫人。彼女の同情を引き出す〝引き〟の話術に水商売のプロ女性の高度なテクを見た!「弟の学費を払っているんで、自分の服は我慢なんです」などと言えば、客の男性はホイホイ買い与え、大金だって貢ぐ可能性大アリですからね。

宮廷はカネと権力がモノを言う典型的なセレブ世界。誰もが自分の豊かさを盛って社交に励むところにまさかの貧乏発言をし、その正直さと勇気が一気に王妃の心をつかむ夫人は、とてつもないプレゼン達人。この人にクライアントを陥落するための「ポリニャックビジネス書」を書かせたら、きっとベストセラーだろうなあ。仕事人はポリニャックに学べ!

『ベルサイユのばら』池田理代子

『ベルサイユのばら』全14巻/集英社マーガレットコミックス Ⓒ池田理代子プロダクション

「宮廷にでて
体面をたもっていけるだけの
十分なお金が
ないからでございます」

「どうしてめったに宮廷にでていらっしゃらないの?」と問うたアントワネットに答えたポリニャック伯夫人の言葉。見栄の張り合いが貴族の当たり前だという宮廷の空気に、カネがないという夫人の逆バリ作戦にまんまとひっかかるアントワネット。「『正直風』という高度な人たらしの技術ですね」と語る湯山さん。

一見ホスト風、実は懐の深い男?「ジェローデル少佐」

ジェローデル少佐は、近衛連隊時代のオスカルの部下で、オスカルの父ジャルジェ将軍が勝手に決めた許嫁です。でも彼は〝働く女〟オスカルの強さと同時に、彼女の女性性にも惹かれる「人を見る目アリ」の恋愛達人。

彼は愛する人を所有し、束縛したいとは思わないタイプ。相手の自由を尊重するという関係は、実はお互い居心地が良く、マチュア世代の女性にとっても最高なはず。

『ベルサイユのばら』池田理代子

『ベルサイユのばら』全14巻/集英社マーガレットコミックス Ⓒ池田理代子プロダクション

「ぼくにも
妻を慕う召使いを
妻のそばに
つけてやるくらいの
心の広さはあるつもりです」

オスカルの父であるジャルジェ将軍に根回しし、求婚者として家への出入りを許されたジェローデル。オスカルの結婚が現実味を帯び、打ちひしがれるアンドレに、余裕綽々でかましたセリフ。懐の深さとも言えるが、アンドレに対して、自分の権力と立場でもって強烈にマウンティングを仕掛ける競争心がザッツ男!

完全主義女を リラックスさせる癒し男「アンドレ・グランディエ」

一方で活躍する女の名補佐役アンドレ。男という種族は男の神輿は担げても女の神輿はあまり担ぎたがらないので、キャリア女性はたいてい派閥をつくらず、独立独歩。こういう部下がほしいものですよね。しかも、その上、その部下がリアル恋愛相手だという、考えるだに最高の男女関係。

「生まれてきてよかった…」の前振りとしてオスカルに「千のちかいがいるか、万のちかいがほしいか」と言っておりますが、フェルゼンの言葉も同様に全世界の女が言われたいセリフです。

『ベルサイユのばら』池田理代子

『ベルサイユのばら』全14巻/集英社マーガレットコミックス Ⓒ池田理代子プロダクション

「生まれてきてよかった…!!」

諦めていたオスカルから愛を告げられ「わたしだけを一生涯愛しぬくとちかうか!?」と問われ「千のちかいがいるか、万のちかいがほしいか、おれのことばはただひとつだ」という名台詞の末にアンドレが発した心の声。自分の身分や立場を呪いながら自己肯定感が低かった男が初めて、自分のことを認めることができた瞬間。

内なる熱を持つ、ロマンチック王子「ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン」

『ベルサイユのばら』池田理代子

『ベルサイユのばら』全14巻/集英社マーガレットコミックス Ⓒ池田理代子プロダクション

「あなたを愛するのは(中略)
ハンス・アクセル・フォン・フェルゼンなのだと
フランス国民のまえに名のりでましょう!」

多くの貴族たちがベルサイユを捨て、国王やマリー・アントワネットを捨てて逃げる中「私はひとり」と打ちひしがれるアントワネットの前に駆けつけたフェルゼン。思いがけない再開のシーンで、アントワネットのために思いの丈を伝えたセリフ。つねに冷静に行動していたフェルゼンの燃えたぎる思いが解き放たれて炸裂。

『クウネル』2026年7月号掲載
取材・文 /今井 恵

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