私たちの乙女心に刺さったあのシーンとともに『ベルサイユのばら』の名言を味わいましょう!/オスカル編
「フランス革命は『ベルばら』で学んだ」とは、マチュア世代の合言葉。それほどまでに影響が大きかった漫画です。大人になって改めて感じる珠玉の名言を、湯山玲子さんが解説します。
目 次
教えてくれた人
湯山玲子/ゆやま・れいこ
著述家・音楽プロデューサー
2023年に東京各地で行われた多発的コンサート『東京のうた』を書籍化。本や漫画、映画を通じて自由に語り合う『ワルい子のためのブッククラブ』も会員募集中。
理想の上司でありながら、 好きな男は正面から誘う「オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ」
今や男たちが「妻が会社を経営していまして……」と躊躇なく発言し、保育園に嬉々として子どもを送っていく時代。でもオスカルが生きていたであろう18世紀、そして池田理代子さんが『ベルサイユのばら』を描かれた1972年ごろは、親や子どもに男、そしてイエに尽くすことが女の幸せとされていました。
私がお会いした際、池田さんも「あの時代、社会に出て活躍する女性を描くには、男と同種同等の外見、つまり男装させるしかなかった」と語っていました。そのオスカルですが、軍人たるプロの矜持と、一方で最愛の人と心も身体も結ばれるというロマンチックラブの体現者として、多くの読者を魅了。
熱い心を持ちながら部下に感情を押し付けることなく、つねに進む道に選択を与え、全力で擁護する姿は理想の上司。仕事が生きがいのハードワーカーですが、その一方で幼い頃から自分に寄り添い、静かな愛情を注いだ男の存在に気づき、自らの恋心を確信してからは「こん夜…アンドレ・グランディエの妻に」と正々堂々正面から誘う人。今やセックスにオープンな時代ですが、女性からのお誘いにはまだまだタブー感が残存。それだけに、この官能的なシーンは大人の再読に耐えうるあっぱれ感アリ。
オスカルの名セリフ1:「人はみな平等、誰もが自由」という考えを貫く
『ベルサイユのばら』全14 巻/集英社マーガレットコミックス Ⓒ池田理代子プロダクション
「おまえたちの心まで
服従させることはできないのだ
心は自由だからだ!」
女であるオスカルに反発するフランス衛兵隊の隊員らに、隊長として根気強く対処していたが、ついに将軍を怒らせ営倉行きを命じられた部下たち。その頬を叩きながら語った言葉。力で相手をねじ伏せるのではなく、つねに会話や自らの態度で示すオスカルの「人はみな平等、誰もが自由」という一貫する考え方は見事。
オスカルの名セリフ2:自ら誘った名言!
『ベルサイユのばら』全14 巻/集英社マーガレットコミックス Ⓒ池田理代子プロダクション
「こん夜…ひと晩を
おまえ…と…
おまえと……いっしょに…
アンドレ・グランディエの妻…に…」
貴族の称号を捨て、国民のために戦おうと決意した暴動鎮圧の前夜、平穏に過ごせるであろう最後の夜はアンドレと結ばれたいと、自ら誘った名言。「女としての喜びに燃えた次のページでは軍服に身を包み、衛兵中隊を率いて民衆につき、フランス軍に進撃する姿がプロとしての意気地。カッコいいですねぇ」と湯山さん。
オスカルの名セリフ3:大人も共感する言葉
『ベルサイユのばら』全14 巻/集英社マーガレットコミックス Ⓒ池田理代子プロダクション
「心やさしくあたたかい男性こそが
真に男らしいたよるにたる男性なのだと
いうことに気づくとき……
たいていの女はもうすでに
年老いてしまっている」
自分のものになりたいと言ってくれたオスカルに「おまえを幸せにできるだけの地位も身分も財産もない」と卑下するアンドレに向け、静かに語った言葉。マチュア世代のように人生の経験値がある女性ならば、うん、うんとうなずくこの言葉。もっと若いうちにわかっていれば……と歯軋りしながら後輩たちに伝えよう。
オスカルの名セリフ4:ユーモアに富んだかっこいい一言!
『ベルサイユのばら』全14 巻/集英社マーガレットコミックス Ⓒ池田理代子プロダクション
「そう女 女というな
うれしくなってしまう
ではないか」
王族警護をする近衛隊連隊長から自ら降格を申し出て、フランス衛兵隊の部隊長になったオスカル。「女の指揮でうごくなんざまっぴらだ」「女は軍隊からでていけ」と叫ぶ隊員たちに放ったユーモア含みの返答。コンプライアンス的にはNGワードだが、この考え方がまだまだ男性の中で根強そうなのが、リアル日本の現状なのだ。
『クウネル』2026年7月号掲載
取材・文 /今井 恵
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