パリとフランスにまつわる情報サイトTRICOLOR PARISを主宰する荻野雅代さんと桜井道子さんおふたりが、毎月交替でフランスから日々の暮らしを紹介してくれます。第6回目は桜井道子さん担当。桜井さんが「パリらしい」と感じる風景についてです。
パリの移り変わりを見つめてきたセーヌ川と橋の歴史散歩
長年暮らしていて慣れ親しんだ風景の中にいても、ふと「ああ、私、今パリにいるんだな」と実感する瞬間がたまに訪れるのですが、なぜか、セーヌ川を渡るときにそう感じることが多いのです。
パリがまだリュテシアと呼ばれていたローマ時代の中心地がセーヌ川の中洲、シテ島だったことからもわかるとおり、セーヌ川はパリの歴史を文字どおり最初からずっと見守ってきた存在なんですよね。
21世紀になった今ももちろん、日なたぼっこしたり、散歩したり、ジョギングしたり、セーヌ川沿いは市民たちにとって欠かせない場所の1つです。ここ数年で、川沿いの道路の歩行者専用エリアがぐんと広がったことで、ますますセーヌ川の楽しみが増えました。
セーヌ川にかかる橋はそれぞれの歴史があって、それぞれに個性的なのですが、なかでも対照的な2つの橋について、お話したいと思います。
●ポン・ヌフ橋
シテ島の西側の先っぽを横切って右岸と左岸を繋ぐ「ポン・ヌフ」は、木造の橋が多かった当時、初めて建造された石の橋だったことから「新しい橋」という名前がつけられましたが、17世紀初めに完成した、現存するパリ最古の橋です。見るからに頑丈そうな石造りのアーチ橋で、そのどっしりとした風格が長い歴史を感じさせます。
●アレクサンドル三世橋
がらっと変わって、「アレクサンドル三世橋」はとても華やかな橋。右岸にはガラス屋根の美しいグラン・パレが、左岸には黄金のドームが輝くアンヴァリッドがここから見えます。
アレクサンドル3世は19世紀末のロシア皇帝で、フランスとロシアの友好の象徴として、1900年パリ万博に合わせて建造されました。鋼鉄でできたこの橋には、華麗な街灯や彫像、装飾が散りばめられていて、歩くだけで優雅な気持ちになれます。
時代も様式も異なるさまざまな橋の姿を眺めながら、セーヌ川沿いをのんびり歩けば、パリの歴史を肌で感じることができるのです。
写真・文/桜井道子