パリから、リアルなフランスレポートを送ってくれていたクウネル・サロンメンバー松永加奈さんが、6年に及ぶパリ暮らしを終え、日本に帰ってきて数カ月。「帰国子女」ならではの視点で、日本特有の習慣やカルチャーに切り込みます。
少しずつ勘を取り戻しながら、日本での生活のペースが掴めてきた今日この頃。帰国当初は、建ち並ぶビルや街中に張り巡らされた広告にちょっと圧倒されていましたが、やはり生まれ育った国の環境に慣れるのはあっという間です。
しかも、何をするにもきちんとマニュアルが整い、みんながルールを守って暮らしているから、それらに習えば大抵のことは問題なし。よく分からないことがあっても、きめ細かい対応のおかげで、安心感は絶大です。
その行き届きすぎるサービスゆえか、あちこちにある「説明書き」や「注意喚起」の多さに驚かされることも。箱や商品パッケージ、納豆のタレの小袋にも「ここを押す」「どこからでも開けます」「両側から引くと中身がきれいに出せます」などなど、おすすめの開き方が明記され、「飛び出すことがあります」「手を切らないようにご注意を」なんて、こちらの心配まで。しかも、「お煎餅の強めな焦げ方」「スナック菓子のスパイスパウダーの塊」といった、一見規格外っぽい仕上がりを購入者が不安に思わないように「食べても大丈夫ですよー」とひと言添えることも忘れません。ありがたい…。
ただ、それらを全部盛り込んだパッケージには大小さまざまな文字が並びまくり、どこに注目したらいいか分からないほどで、若干、そのデザイン性が気になります。
人が行き交うエリアや危険を伴う場所でも、全方位型の気遣いを感じます。例えば、道路工事や建設現場では「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」とおわびの看板が立ち、その横で作業スタッフが道を誘導。混雑する駅の構内には、注意喚起のアナウンスと貼り紙がいっぱいで、主要ターミナルでは階段やホームも指示で溢れています。確かにどれも、事件や事故を回避するための必要事項。
しかし、海外にはこういった、トラブルを未然に防ぐための「全力サポート」がかなり少なく、いまそのギャップを大いに感じています。なぜなら、フランスではどういった状況も、消費者やユーザーの判断に丸投げ状態。袋や箱を開けるポイントくらいはありますが、コツや注意書きは当然なし。大がかりな工事現場以外は、ロープをちょろっと張って工事中であることをお知らせ。道に穴があったり、歩道が途中で通れなくなっていても「見ればわかるでしょ、どうするか自分で判断して」ということらしいです。
ユーザーを全力サポートする日本と、各自の判断にお任せのフランス。両方を経験してみたところ、「そこまでしてくれなくても」「いやもう少し助けてくれても」とそれぞれに首を傾げることがあり、足して二で割ればちょうどいいのに…というのが正直なところ。でも結果的に「指示してもらうとやはり助かる~」ということがほとんどかも?どちらにせよ、最後は自己責任なわけで、うっかりミスが多い私はどの国にいても「しっかりしろ自分」と言い聞かせて暮らしています…。
松永加奈のフランス便り 締めくくりシリーズ
→第1弾【松永加奈のフランス便り63】まるで絵葉書!どこを切り取っても美しい街の写真でパリ暮らしを振り返り。
→第2弾【松永加奈のフランス便り64】「あれ買ってきて」といわれる”フランス限定”お土産リスト。
→第3弾【松永加奈のフランス便り65】パリ生活を締めくくり。いろいろあった6年でした。