厳しい暑さもいくぶん和らぎ、今年は8/23に処暑を迎えました。クウネル・サロン プレミアムメンバーであり調香師の大沢さとりさんの習慣「朝の一服」では、夏の名残を惜しむような、涼やかで風情あるお菓子が並びます。
立秋から数えて、約15日ほど。二十四節気が、立秋から「処暑(しょしょ)」へ変わりました。「処」は、落ち着くという意味を持ち、厳しい暑さの峠を越した頃です。朝夕には涼しい風が吹きはじめ、いつの間にか、蝉の声は心地よい秋の虫の音色に変わります。
とはいえ、実際はまだもう少し夏の名残を感じる暑さが続き、不安定な気圧の影響で台風の心配も尽きない時季でもあります。自然の営みや恩恵に感謝しながら、体も心も、健やかに整えて過ごしたいですね。この季節のお菓子には、のど越しの良い葛餅などもおすすめです。
1.『とらや』葛製 花水仙饅
2.『とらや』金魚の錦玉
3.『御菓子司 塩野』蚊やり薯蕷饅頭
4. 『御菓子司 塩野』半生菓子の詰め合わせ
5. 『根岸 芋坂 羽二重団子』羽二重団子
店舗DATA
1.2 『とらや 赤坂店』
住:東京都港区赤坂4-9-22
3.4 『御菓子司 塩野』
住:東京都港区赤坂2-13-2
5 『根岸 芋坂 羽二重団子 本店』
住:東京都荒川区東日暮里5-54-3
【今月のさとり花図鑑】
ひとつは、初夏から秋まで、長く紅い花を楽しませてくれる百日紅(さるすべり)。百日紅は遠目で見ることが多いせいか、花の印象は塊(かたまり)のようで花びらが何枚なのか、どこからどこまでがひとつの花なのか、判然としません。とくにこのフリフリが曲者で、ひとつのフリルが一輪なのかと思ってよく見れば、6枚の花びらが合わさって中央に長い蕊があることがわかります。
咲きはじめの頃はあまり匂いがないのですが、盛夏を迎えると赤い花は粉っぽく、甘い香りがします。さらに、9月には青くさい香りへと変わっていきます。多くの花がそうであるように、同じ品種の白花と赤花でも匂いは違います。朝と夕方、季節でも変化するようですし、個体差もあります。
また、もうひとつの夏の花は、ネム。ネムの花は、お花屋さんでは通常見かけません。山の谷沿いに生えていたり、植栽されている木も背が高いので、咲いている花を直接嗅ぐ機会はまれで、私も以前、この花の香りを作るために、まずは鉢植えを買って、観察するところから始めました。
ネムのちいさな拳骨のような蕾は、午後3時くらいから糸のような花びらをぴょんぴょんと伸ばし、夕方5時ころには化粧筆のように丸くなります。匂いは最初、まだ未熟な果実のような青い匂いから、じょじょにあま酸っぱいフルーティに変わり、やがてパウダリーになります。
花の香りは何日にも分けて、何回も確かめないと確かなところはわかりません。どんな花もそうですが、自分の思い込みをなくし、白紙の状態で香りを感じることが大切ですね。
▼調香師・大沢さとりさんが綴る「お菓子と花の小さな歳時記」一覧▼
◎【7月】調香師・大沢さとりさんが綴る「お菓子と花の小さな歳時記」
◎【6月】調香師・大沢さとりさんが綴る「お菓子と花の小さな歳時記」
◎【5月】調香師・大沢さとりさんが綴る「お菓子と花の小さな歳時記」