手仕事好き必見。横須賀美術館で開催中の『 糸で描く物語 刺繍と、絵と、ファッションと。』展。~6月27日(日)

刺しゅうと、絵と、ファッションと

刺繍にフォーカスした展示『糸で描く物語 刺繍と、絵と、ファッションと。』が、横須賀美術館にて開催中。幅広いジャンルの約230点の刺繍作品が集合。「手仕事もの」が好きな方にはワクワクが止まらない展示です。ぜひお出かけください。

針と糸を使い、一針ずつ手で縫い進める刺繍は、世界のさまざまな地域で古くから表現するための技法として親しまれています。身近な表現のひとつでもあり、現代の服飾品にもなくてはならない存在です。見ているうちに注ぎこまれた時間や労力に想像を馳せ、作り手の思いが伝わってきます。そんな刺繍にフォーカスした展示「糸で描く物語 刺繍と、絵と、ファッションと。」が、横須賀美術館にて開催中。幅広いジャンルの約230点の刺繍作品が展示されています。

 刺繍と、絵と、ファッションと
入り口に展示された、スロヴァキア各地方の民族衣装の人形。

展示は、地域や民族ごとにさまざまな技術が伝わる、中•東欧の伝統的な刺繍が施された民族衣装から始まります。ルーマニア中部トランシルヴァニアのカロタセグ地方に残る刺繍約30点と、伝統的に手工芸が盛んだったスロヴァキアで制作された、華やかで技巧性に富む刺繍約30点を展示。赤や黄色、緑などの鮮やかな色を使った文様がきらびやかな手仕事の美しさに圧倒され、いつまでも見ていたくなります。

刺しゅうと、絵と、ファッションと
《カロタセグ地方ハンガリー人エプロン》(部分)20世紀半ば、谷崎聖子、シェレシュ・バーリント蔵

次に展示されているのは、北米大陸の氷雪地帯に暮らす、先住民族のイヌイットの人々が制作する壁掛け。20世紀半ば以降、狩猟生活から定住生活へと大きく生活が変わるなかで、生活文化を後世に伝えていくために生まれたものです。カラフルな刺繍やアップリケで表現された動物など、素朴でかわいらしい印象ですが、犬ぞりや狩猟の様子など北極圏の自然や固有の文化が生き生きと表現され、資料としても大きな意味合いがあります。

刺しゅうと、絵と、ファッションと
サラ・イヌクプク《ダッフル製壁掛け〈お魚の話をするイヌイット〉》北海道立北方民族博物館

続いてはさまざまな手法を使った、現代作家による刺繍作品。作り手の身体や思考の痕跡も感じさせてくれ、刺繍の魅力を独自の視点から深めている現代作家として、エヴァ・ブラーズドヴァー(チェコ)、絵本作家エヴァ・ヴォルドヴァー(チェコ)、ホジェル・メロ(ブラジル)を紹介。

刺しゅうと、絵と、ファッションと
エヴァ・ブラーズドヴァー(刺繍)/パヴェル・ブラーズダ(原案)《城》1957-58年、個人蔵
刺しゅうと、絵と、ファッションと
エヴァ・ヴォルフォヴァー《『コーヒーの泡から生まれたこねこ』絵本原画》2007年、個人蔵

また日本からは幾何学模様を刺す日本刺繍の樹田紅陽、オートクチュール刺繍の小林モー子、日本刺繍で絵画のような作品を作る蝸牛あやによる「糸で描く物語」を紹介。さらに絵本でも知られる童画家の武井武雄、現代の刺繍家の大塚あや子の作品も見ることができます。

刺しゅうと、絵と、ファッションと
小林モー子 ≪シュナウザー(ブローチ) ≫ 2018年、作家蔵

最後は、高級ブランドのコレクションを支えてきたフランス伝統のオートクチュール刺繍。クロッシェドリュネビュルという特殊なかぎ針を使い、糸で縫うだけでなく、ビーズやスパンコール、モールやコード、羽根など、さまざまな素材を生地の裏側から刺繍する、独特の手法です。本展では、パリでシャネルやディオールなど高級服のメゾンから発注を受けて刺繍を施す、1956年創業のパリの刺繍工房メゾン•ヴェルモンの作品を展示。高い技術の美しい刺繍を見ることができます。

刺しゅうと、絵と、ファッションと
メゾン・ヴェルモン《刺繍サンプル》2004年、メゾン・ヴェルモン蔵
刺しゅうと、絵と、ファッションと
東欧刺繍のマスキングテープと刺繍絵本のファイルなども。
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ミュージアムショップでは、図録のほか、刺繍キットや文房具、展示されていた絵本など充実。刺繍といっても、民族衣装からアートまで時代や地域を越え、幅広い表現があると知ることができる展示。刺繍や手仕事が好きな人は必見です。

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