小学生の頃におもしろ消しゴムを集めたことがきっかけで、文房具に魅了されたという菅未里さん。パリにも度々訪れ、足を棒にしながら文房具店巡りをしているそう。

「世界各地に行くと、それぞれ文房具にも個性があってカルチャーの違いを感じます。例えばイタリアのフィレンツェだとマーブル模様やレザーを使った観光地のお土産的な高級文房具を扱うお店が多い。南米はその真逆で、デザインも素材もそっけない文房具が薬と一緒に売られていたりするんです。パリには、最近日本でも人気の『パピエ ティグル』のような文房具ブランドや専門店のほか、百貨店や雑貨屋、ライフスタイルショップにも文房具が充実しています。日本の文房具は生活密着型で実用性を求める部分が大きいですが、フランスではインテリアや雑貨と同じように解釈されていて、デザインが秀逸なものが目を引きますね」

フランスの文房具といえば紙が特徴的だと言います。「フランスの有名文房具ブランドの『クレールフォンテーヌ』は、もともと160年以上の歴史がある製紙メーカー。世界中のエキゾチックな紙を１冊にまとめたブロックパッド（写真8）もセレクトのセンスが素晴らしい。紙質がいいというよりは、独特の風合いのものが多いですね。日本の紙のほうがなめらかで高品質ですが、日本は画数の多い漢字を書くのに細いペンを使うので、引っ掛かりの少ない紙が好まれるため。文字や文化の違いが、ものづくりや好みの違いにつながっているんです」

そして、フランスらしさを感じるのが色使い。「日本ではベーシックな色が好まれるので、どちらかというと目にやさしい、やわらかな色が主流ですが、フランスはパキッとした鮮やかな色や箔を使った華やかなものが多い印象。雑貨店で見つけたノート（写真1）もフルカラーで、中面も表紙の色とコーディネートされていて印刷も凝っているんです。ライフスタイルブランド『マラン・モンタギュ』のノート（写真16）も象徴的なエッフェル塔のイラストやノートの縁にきらりと光る箔が施されていて、楽しいことだけ書く日記にしようかな、とか使い道を考えるのもワクワクします。持っているだけで高揚感や楽しさがあるので、用途が決まってなくてもつい買ってしまいますね」