60代以降の「住まい」どうする?不動産・住居・相続。棲家を持つ理由は生き方に向き合うきっかけに【メロウライフ】
エディターの山村光春さんと、エッセイストの広瀬裕子さんによる往復連載。
「60代以降に使われる『シニア』という呼び方がどうもしっくりこない」という2人が、「私たちらしい人生の後半戦」について模索します。シニアでもなく、シルバーでもなく……。だったら「メロウライフ」なんていかがでしょう?
今回は「家を買うか否か」がテーマ。「一生、賃貸」でいこうと決めた山村さん(リンク貼ります)に対して、広瀬さんは?シングルという同じ立場でありながら、捉え方は様々。その違いをお楽しみください。
目 次
都内の不動産価格の高騰、「購入または賃貸」は、未定のまま。
東京にもどろうと思った時、想定外だったのは不動産価格の高騰でした。イメージしていた価格の1.5~2倍、物件によっては10倍以上のものもあり、東京を離れていた15年の変化に驚きました。
帰ってきた当初は、マンションの購入も視野にいれていましたが、途中から方向転換することに。することにしましたが、先々「購入または賃貸」は、未定のままです。
30代でマンションを買い、40代で一戸建てを建て、でも、結局、どちらも手放した経緯があります。
そのなかで気づいたのは──不動産(投資も含め)がほしいのか、長く住める(できれば一生)家がほしいのか、相続として残したいのか、気に入った空間がほしいのか、すきな場所で暮らしたいのか、その時の自分の生き方に合った住居がほしいのか──を、明確にしていないと「なんとなくそうした方がいい」になってしまうことです。
似ているようでそれぞれ微妙に違います。プラス、これからは「歳を重ねる」が加わるため「自分がどうしたいのか」に向き合う必要があります。
賃貸はリフォームできづらいのがデメリット
いまの住まいは賃貸です。ペット可、比較的シンプルな造り、窓からの景色で決めました。
それでも、気になるところは多々あり、入居して早々、タオルハンガーはじめ、その他の取れる付属品は全て取りました(保管してあります)。キッチンの扉は、剥がせるシートを貼り、色を変えました。
賃貸は、内装に違和感が多いのに手を加えられないのがデメリットです。
入居当初は、ビルとビルの間から遠くに富士山が見えた現在の住まいです。でも、1年も経たないうちに高層ビルができ、富士山は見えなくなりました。また、近くにタワーマンション(50階建)3棟も建設中です。
窓から見える景色を「資産価値」としてこのマンションを購入していたら、もしかしたら「こんなはずでは」と後悔していたかもしれません。周辺環境は、どのように変わるか、誰にもわかりません。
あらゆるカテゴリーの住まいを変遷してきて思うこと
わたしは、できるだけ素直な選択をしてきました。賃貸マンション、分譲マンション、一戸建て、賃貸一戸建て、2拠点生活、地方移住をした後のいまです。
どちらもいい点もあれば、よくないところもあります。自分に合いそうなら、そちらを選択してみる。「購入か賃貸か」は「東京か地方か」と、似ている気がします。
最近、気になることがあるとしたら「いつまでここに住めるか」でしょうか。物価上昇。不動産投資の多さ。東京の変化の速さ。
そこで、先日、区役所の住宅課に公共住宅について聞きに行ってきました。担当の方曰く「65歳になるとシングルでも高齢者住宅に入れる資格」が得られるとのこと。
高齢者住宅というと不便な所にありそうですが、確認したら「日本橋」「銀座」「築地」という地名もあるではないですか。抽選ですが「ここに住みたい」気持ちがこの先もつづけば、何とかなる、いえ、なりそうな気がしました。
生き方に合わせた選択を
結論としては「とても気に入った物件で購入可能なら買う」、そうでなければ(高騰で買えない可能性含め)生き方に合わせた「賃貸」、それがむずかしくなったら公共住宅、です。
捻りのない結論になってしまいましたが、それは、いまの住まいが、コンパクトさも含め(内装の違和感はありますが)、土地の歴史、文化、気質、交通、お店、風景、が気に入っているから。
はじめての景色に驚く旅行者のように、日々、暮らしています。
~アフターメロートーク~
僕らはシングルなので比較的、住まいの選択も自由ですが、家族がいる方は「そういうわけにはいかない」ことだらけなんでしょうね。
家族がいてもいなくても歳を重ねると「見直し」が必要な時もあるかもしれないですね。しかし、自分の計画性のなさに今更ながらおどろきました。大丈夫かな?
とある60代の方の取材で、「私、あさってより先は見ないの」と言われたのですが、そういうのんきな生き方、憧れちゃうなあ~。「しあさって」はどうなるかわからないし、いまの暮らしを楽しくが大事!ですかね!。
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プレミアムメンバー
広瀬裕子
執筆のかたわら、50歳から空間設計の仕事をはじめ、現在は設計事務所の共同代表としてホテルや店舗、レストランなどのディレクション、フードアドバイス等にも携わる。著書に『55歳 おとなのまん中』(PHP研究所)など多数。
Instagram:@yukohirose19