富士山と海を眺めて暮らしたいと亡き夫が設計した家。イーオクト代表・髙橋百合子さんのくつろげる部屋(前編)

ほっとする、リラックスできる、落ち着く。クウネル世代にとって部屋は、くつろげることが大切です。それは、家族の形態が変わりひとり暮らしをするようになっても、実家を引き継ぎリフォームすることになっても、都心から自然豊かな地に暮らし替えをしても、そしてパリのアパルトマンでも。自分のスタイルとさまざまなストーリーを持つ16組のくつろげる部屋をお届けします。今回はイーオクト代表・髙橋百合子さんのお部屋です。
間取り

約175平米。築1年。玄関以外はすべて、使い勝手のいい引き戸。日本の木材を使用した木造建築。ユーティリティは、玄関からキッチンへとシンプルな導線で繋がり、バッグなども収納できる便利な場所。
自然を感じられる家は、地球上の天国のような場所。

リビングへと続く、開放的なダイニングとアイランドキッチン。写真の左奥は小さな中庭。「図面で見たときは、無駄かもしれないと思ったスペースですが、ヤマボウシの木を植えてみたら、どこからも眺められる素敵な空間になりました」。
里山の中の山道を上りきったところに建つ、髙橋百合子さんの自宅。夫で建築家の鈴木エドワードさんが、夫婦で住むために設計した家です。「富士山と海を眺めて暮らしたい」と、この葉山エリアに土地を探していたふたりは、2018年にこの場所に出会い、設計中によく訪れてピクニックをしていたそうです。翌年、基本設計が終わったときに夫が急逝。
「都内で快適に暮らしていたので、この山の中にひとりで住むことが考えられず、植林をして森にしようと思ったことも。でも、建築家である夫が、私が心地よく暮らすために何度も何度もどうしたいか聞いてくれて設計した、ふたりのための家であること。何よりも夫が愛していた地であること。だから、建ててあげようと思いました」と髙橋さんは決断しました。

1ミリの段差もなく右手のテラスへと繋がる、開放感のあるリビング。「これからの季節はリビングの外のテラスも快適です。本が好きなので、テラスではひたすら読書しています」。日本の縁側から発想したテラス、四季を快適にする庇、坪庭など、暮らす人の心地よさを追求する、鈴木エドワード建築設計事務所のメソッドが随所に反映された、「自然と共に生きる」、「自然を活かす」家。
そんな想いで建てた家ですが、住めば住むほど「遠くても帰ってきたくなる家」となり、1年前から本格的に移住。今は週3日、車と電車を利用し2時間半かけて都内のオフィスまで通勤する生活。
「逗子まで帰ってくると、海風のせいか空気が変わるんですよね。特に夏は、駅に降り立つといつも気持ちいいなぁと思いますよね」。この瞬間に、仕事モードのスイッチもオフに切り替わるそうです。
PROFILE
髙橋百合子/たかはし・ゆりこ
サステナブルで環境にやさしい製品の輸入・卸、デザインの企画、制作、販売をする会社、『イーオクト』を2011年に設立し、代表を務めている。
『クウネル』2024年7月号掲載 写真/加藤新作、取材・文/黒澤弥生
SHARE

『クウネル』NO.127掲載
くつろげる部屋が好き!
- 発売日 : 2024年5月20日
- 価格 : 1000円 (税込)