【住まいと暮らしvol.53】アートと自然に囲まれ、自分時間を大切にする暮らしー切手デザイナー吉川亜有美さん

部屋やごはん、お気に入りの道具たちを本人撮影の写真で見せていただき、バトンを繋いでいくリレー連載。前回の顧彬彬さんのバトンを受けてご登場いただくのは、切手デザイナーの吉川亜有美さんです。

吉川さんの暮らしのルール

1)静岡の美味しい野菜や魚をたくさん食べる
2)家族それぞれの趣味を大切にする
3)明日の自分のために、先取り家事をこなす

日本郵便で切手デザイナーとして働いている吉川さん。

「切手って本当はデザインがなくても十分機能するんです。でも、そこにデザインを加える事でもたらされるものが、すごく素敵だなと思って仕事をしています。コンセプト作成から取材、イラスト作画を一貫して1人のデザイナーで担当するので、責任はありますが、自分のやりたい事を素直に表現できます。

この仕事に就く前は切手という単一商品を手がけていくことに飽きるのではないかと思っていたのですが、切手を通して知るテーマや知り合う専門家の方々からの学びが多く、全然飽きないです」

そんな吉川さんは、コロナ禍を機に、東京の都心から静岡に移住したそう。

「静岡では自然のリズムと一緒に生活ができると感じます。季節ごとの移ろいが気候だけではなく、生活のさまざまな部分で感じられます。場所なのか、年齢によるものか分からないですが、自分の趣味趣向がどんどんプリミティブな方向に変化している気がします」

アーティストの友人も多いという吉川さん。ご自宅には、作品があちこちに飾ってあります。

「立体作品や民藝も好きで、装飾がどんどん増えてしまいますが、意図して作り上げた雰囲気よりも、時間をかけて集めてできた雰囲気の方が落ち着きます。ゆくゆくはもう少し広い庭付の家に引っ越して、友人に気軽に泊まりに来てもらえるようになるのが理想。これから自分の時間が増えたら、また陶芸の勉強を再開したいです」

ベッドサイドには、同級生の丸山素直さんの描いた花の絵を飾って。「見ているととても元気になります。キャビネットの上にもお気に入りの小物をたくさん置いていて、毎朝機嫌よく起きられるよう、自分を応援するグッズを集めた場所になっています」

リビングには、ソファーのほかにニーチェアを置いて。「シキリのファブリックがお気に入り。ロッキングチェアなので、この椅子で本を読んだり、編み物をしたり、とてもリラックスした時間を過ごしています」

赤をポイントに、イラストやテキスタイルを飾った玄関。「赤いセブンチェアはお気に入りでしたが、古くて背もたれが心許なく修理も難しかったので、玄関でのちょっとした腰掛けや荷物置きとして使っています。海で拾ってきた石や流木も気ままに飾っています」

部屋の角にある壁の出っ張りと、エアコン下のスペースにぴったりの本棚をDIYして。「本棚を作ったときはスカスカだったのに、あっという間にぎっちり詰まってしまいました」

夫婦共に椅子がとても好き。家は椅子だらけなのだとか。「左奥の椅子は自分でファブリックを張り替えてリメイクした、ストッケのバランスチェア。手前は古い籐の椅子を家具屋さんで編み直してもらったもの。修理は意外と高くつくこともありますが、気に入ったものを長く使う方がものに愛着が湧きます」

飼い猫のてんてん(メス、9歳くらい)は、東京に住んでいるときに飼いはじめた保護猫。「ちょっとビビりだけど人懐っこく、鳴き声で自分の要望を伝えてきます。夏から飼いはじめたメダカ鉢の水をよく飲んでいますが、どうにか共存しています」

旅先や素敵な陶器の展示会へ行って迷ったときは、おちょこやぐい呑みを買うそう。「友人が来たとき、好きな器を選んでもらったり、ちょっとしたつまみを入れるのにも使えるので、意外と便利。かさ張らずに集められるので、ついつい増えてしまいます」

お気に入りの包丁。「毎日使うので使い勝手が良く、手に馴染むものを選んでいます。左から日本橋うぶけやのアジ包丁、木屋の三徳包丁、吉田璋也デザインのパン切りナイフ。特に最近出番が多いのがアジ包丁です」

8年ほど前にお味噌のワークショップに参加してから、自分で味噌を作っているという吉川さん。「大きなほうろう容器やタッパーに仕込み、1年以上発酵させます。でき上がった味噌は使う分だけ「井川メンパ(※静岡の井川で作られる漆塗りのお弁当箱)」の味噌専用の容器に入れています。奥の円形の容器はお弁当箱として使用しています」

 

「夫が趣味でアジやカマスをよく釣るので、お刺身やアジフライにしていただきます。骨は冷凍して溜まったときに、油で揚げて骨せんべいにしてできるだけ全部食べるようにしています。 静岡に来る前まで子どもは刺身が食べられませんでしたが、釣りたての鯵を食べてからすっかり魚好きに。三枚おろしも上達しました」

しらす漁港が近くにあり、禁漁期を除いて漁がある日には生しらすが食べられるという羨ましい環境。「新鮮なしらすは苦味や臭みが全くなく、甘味があります。釡揚げを炊き立てのごはんに乗せて食べるのは、一番の贅沢! 猫もしらすの匂いにつられてやってきます」

吉川さんが編んだカーディガンと手袋。「本を見て編むこともありますが、キットなら編み図に合った毛糸が一緒に買えるのでとても便利。編み物の良さは道具もかわいいこと。お気に入りのクッキー缶にスケールや編み針などを収納しています。今年は編み機に挑戦したいと思い、道具や材料を集めています」

切手デザイナーの仕事を始めてもうすぐ7年。「筆まめではないので、気軽に書けるよう、展覧会や文具店へ行ったときにポストカードをよく買います。銀座の鳩居堂や日本橋の榛原は和風のかわいいものが多く、目上の方へのお手紙にも重宝します。右中の赤い切手は2024年用の年賀切手、右下の切手は昨年発売した冬のグリーティング切手。切手の絵柄に登場する小物や動物、食べ物などは生活の中からのインスピレーションが大きいです」

富士山がきれいに見えると、うれしくなってつい写真を撮ってしまうという吉川さん。「当たり前の景色なのに、毎日表情が違います。特に初冠雪の日は心の中で拍手をしながらパシャリ。写真はランニングコースにしている公園から。富士山と海を見ながらのランニングは、大切なリフレッシュの時間です」

自宅から徒歩5分の浜まで、家族で散歩に行くそう。「よくシーグラスやきれいな石を探したりして遊んでいます。子どもはすぐに持ちやすい流木を拾ってきます」

profile

吉川 亜有美/よしかわ あゆみ

神奈川県鎌倉市出身。パッケージデザイナー、フリーランス期間を経て、2017年8月より日本郵便で切手デザイナーとして働く。2021年コロナ禍をきっかけに、東京の都心から夫の故郷である静岡へ移住。海と山に囲まれた小さな街で、富士山を眺めながら切手のアイデアを考えたり、趣味の料理や手芸に励む。子育てと家事、仕事に追われる1児の母。

吉川さんがバトンを渡すのは、日々の道具を取り扱うギャラリー「日ト(ひと)」を営む藤本香奈さん。「藤本さんは大学の先輩。自然豊かな山口県の古民家で、素敵な暮らしをされています。味噌や梅干し、らっきょうなどの保存食を毎年作られていて、その写真を見るだけでも刺激を受けています」と吉川さん。藤本さんの暮らしは、4月中旬に公開予定です。どうぞお楽しみに。

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