【住まいと暮らしvol.52】仕事と暮らしも混じり合うシームレスな生活ーHAGISO 顧彬彬さん

部屋やごはん、お気に入りの道具たちを本人撮影の写真で見せていただき、バトンを繋いでいくリレー連載。前回の日坂春奈さんのバトンを受けてご登場いただくのは、「HAGISO」を主宰する顧彬彬(こぴんぴん)さんです。

彬彬さんの暮らしのルール

1)家でも外でも気持ちのいい挨拶をする
2)いろいろな境界線をあいまいにする
3)来るものは拒まず、去るものは追わずを心がける

中国に生まれ、4歳から東京で暮らす彬彬さん。大学で建築を学び、東京・谷中で古い木造アパートをリノベーションした最小文化複合施設「HAGISO」を運営しています。

「カフェやギャラリー、宿泊施設が入っていて、ここをきっかけにさまざまなご縁ができて、町に飲食店や活動拠点が増えてきました。私は店舗のブランディングやグラフィックデザイン、展示の企画などの仕事をしています」

3年ほど前に「HAGISO」のすぐ近くに家を建て、仕事も暮らしも混じり合ったシームレスな生活を送っているそう。

「個人の商店がまだまだ残るこの町で、夕方の買いものはスーパーだけでなく、八百屋さん、お米屋さん、お肉屋さん、魚屋さん、こんにゃく屋さんをまわります。そんな風に生活していると、自然にすれ違う人との挨拶や立ち話も多くなり、心温まる瞬間がたくさんあります。

仕事と暮らし、家と町、家族と友人など、境界線を引くのではなく、あいまいにしていくことで新しい発見があったり、見ている世界が広がっていくような気がしています。暮らしの中にあるものも、作り手の顔が見えるものをできるだけ選ぶようにしていて、雑貨も服も音楽も、HAGISOを介して出会った作家さんのものが多いんです」

 

表玄関には、隣にある児童遊園との連続感を意識した「ご自由にお座りください」というベンチが。「散歩途中のおばあちゃんが休んだり、小学生が放課後ベンチに座っておやつを食べたりするのも日常の風景のひとつです」

1階の入口は土間に。「町とつながりをもった、誰でも気軽に立ち寄れるような家にしたくて、玄関の扉は勝手口ドアを採用。あえて玄関らしくない佇まいにしました。床には上海タイルとよばれる中国のタイルを使い、中と外を連続させています」

家の土間と玄関先を使って、ご近所の人と一緒に不定期で開催している軒先マーケット。「フリーコーヒー、陶芸家のお隣さんの器の販売、紙芝居屋さん、ミニコンサートや子どもたちが考えたお店屋さんをやったりします」

リビングの一角はダイニングテーブルとベンチだけの構成に。「子どもがいると、いつもおもちゃで溢れかえっているのですが、どんなに部屋が荒れていてもささっと片付ければきれいになる一角があることが、私にとっての救いです(笑)」

家の中にテレビは置かず、リビングのソファの上には子どもたちの描いた絵を飾って。「すぐに入れ替えができるように、マスキンテープで止めることが多いです。映画など観るときは、セットしてあるスクリーンを下ろしてプロジェクターで投影することも」

リビングの片隅にはサンルームが。「朝起きて一番の光がとても心地よく、目を覚ましてくれます。ハンモックの下には、真鶴町で活動されている向井日香さんの作るラグを敷いています」

旅先でひろった思い出も家の片隅に散りばめて。「この丸い石は、去年家族で五島列島にいった際に拾ったもの。素潜りに目覚めた夏、誰もいないプライベートビーチのような海岸でひろいました。この石を見る度に、透き通った青い海を思い出します」

最近の朝の楽しみは、長谷園の土鍋で炊くふっくらごはん。「小麦粉の摂取を控えることをゆるく意識して、まずは平日の朝ごはんをお米中心にすることに。始めて2週間ほどで肌荒れがすっと消えるようになりました。でも本当はパンも大好きなので、週末だけは解禁。家族でパンケーキを焼いたり、パン屋さんで好きなだけパンを買って食べるのも週末の楽しみのひとつです」

家の冷凍庫には、お母さまが作るワンタンや皮から手作りの餃子が常にストックされているそう。「時間がないときもささっと茹でてお腹を満たせる完全食。子どもたちも大好きです。夫が出張の度に買ってくる民芸の器に盛っていただきます」

半年前くらいから、コンポストを使い始めたそう。「数年前にも密閉型のものを使っていたのですが、上手く分解できず途中で断念。これはデザイン性もあり、臭いや虫の発生も少なく、とてもいいです。子どもがまだ小さいのでどうしても食べ残しやゴミが多く出てしまうのですが、毎日出すゴミが少しでも減るのは環境にいいだけでなく、自分のストレスも軽減してくれている気がします。堆肥に変わったものは、庭の草木にまいています」

好きなアーティストの音楽はCDを買うようにしているそう。「装丁や中に入っている歌詞カードの世界観は、CDにしかない魅力。部屋の中に飾ったりして、音楽を聴いていないときでも、その世界観を楽しんでいます」

HAGISOのギャラリーで展示した作家の作品も、家に飾って。「これは最近展示していた彫刻家、髙山瑞さんの作品。直射日光の当たらない階段の窓辺に飾っています。「草」と彫ってあるのですが、時間によって影の落ち方が変わるので人の横顔にみえたりとさまざまな表情をみせてくれるのが魅力です」

気に入った服やアクセサリーは色違いで買うという彬彬さん。「これは大好きな『AIR ROOM PRODUCTS』のシャツと『SOK』のピアス。このシャツとピアスの組み合わせを身につけると、一番自分らしさを取り戻したような気がするんです」

2羽の手乗り文鳥。「HAGISOを始めたころ、最初はお店で飼っていましたが、先代の文鳥が寿命で亡くなり、一年前ほど前に家に新しく迎え入れたのが、「アメ」と「ハル」。つがいなのですが、仲が悪くいつも喧嘩ばかりしています(笑)」

谷中では軒先での「ご自由にどうぞ」がとても頻繁。「写真に写っているのはどれもそこから頂いたもの。私も使わなくなったものは気軽に「ご自由にどうぞ」をするように心がけています。貰い手は見えないですが、町の中でものが循環しているのが心地よく感じます」

2013年から、カフェやギャラリー、サロンや宿泊施設などの機能が一緒になった最小文化複合施設HAGISOをスタート。「HAGISOから自宅までは徒歩数分。日常的な活動範囲も半径500m以内と、仕事も生活も常にシームレスな暮らしをしています」

profile

顧 彬彬/こ ぴんぴん

中国杭州生まれ、東京育ち。2013年にパートナーと共に最小文化複合施設「HAGISO」をスタート。東京谷中を拠点に、飲食、宿泊、建築設計業を営む。2児の母業をしながら、グラフィックデザイン、ギャラリーの企画、自社店舗のディレクションに携わる。
https://hagiso.com/
instagram:pinpinco

彬彬さんがバトンを渡すのは、日本郵便の切手デザイナー、吉川亜有美さん。「大学時代の友人で、数年前に東京から静岡の海の近くに移住した吉川さん。切手を通して触れる彼女の世界観をいつも楽しみにしています」と彬彬さん。吉川さんの暮らしは、3月下旬に公開予定です。どうぞお楽しみに。

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