毎日の暮らしや身のまわりのこと、機嫌よく整えられていますか? 体力や気力が若者のころとは違うと感じても、いまの自分に無理のないやり方で日々を気持ちよく。一日の終わりにフックにひっか けて乾かす。小さなストレスを 見逃さない気持ちが大事。クウネル世代の整え上手が実践している生活のルール、参考にしたいことがいっぱいです。
引田かおり/ひきたかおり
ギャラリーフェブ主宰 63歳
東京・吉祥寺で夫と共に 『ギャラリーフェブ』、パン屋『ダンディゾン』を営む。著書に『青空 そよかぜ 深呼吸』(大和書房)、『「どっちでもいい」をやめてみる』(ポプラ社)など。
■ルール1■
人に手渡し、 循環させて、服を生かしきる
「買い物が好きだし、服もモノも好き。以前は服を買うとき、これ は着回せるかしらとか、長く着られるだろうかと考えました。が、いまは気 に入ったものは買おうというマインドになりました」
おしゃれ上手で家事上手、いつもき れいに片づいた部屋が印象的な引田かおりさん。買ったお気に入りの衣類やバッグはどうやって片づけているのでしょう。
「モノが滞っているのが好きじゃない んです。体も同じですが、食べて出すという循環が大切でしょう。循環がスムーズだと軽くて気持ちもいい。洋服も同じことで、いくらお気に入りでも服がクローゼットにぎゅうぎゅうに押し込まれて死蔵されているのは、服もかわいそうだと思います」
だからクローゼットがごちゃごちゃしてきたら見直して、着る機会が少なくなったものは人の姉や経営するベーカリーのスタッフに、気に入ったらという条件で引き取ってもらいます。
「譲って着てもらったほうが服は生き返るし、そのことを大切にしたいと思っているのです」
■ルール2■
ホテルの ような、収納 スタイル
この写真はベッドルームにある、 オンタイムの衣類を収納するオープンなクローゼット。「モノが停滞しているのが嫌い」という言葉が納得できる、ゆとりある収納。モノの出し入れがしやすく、機能的です。
「ホテルに泊まるのが好きなんです。整然と片づいていて、清潔なのがいい。気持ちが休まるし、こんなふうに暮らせたらいいな、と感じます」
なるほど、落ち着いたホテルのたたずまい。夫も同じように整理整頓好きなのも助かっているそう。ちょっと散らかってきたな、そろそろあそこは片づけ時なのかも、と思うタイミングも似ている、そんなパートナーと家事をシェア。素敵な共同作業です。
■ルール3■
大人は こざっぱりがエチケット
引田さんが服について考えるとき、 ぱりっと、こざっぱりした大でいたい、という思いがあります。
「最近は大人も白いコンバースを履いたりすることは当たり前ですが、履き古したスニーカーは似合わないと思うんです。年をとって中身がある程度くたびれてくるのは仕方がないんだから、着るものはぱりっとしていたい。白いスニーカーやTシャツは真っ白がいいし、アイロンが必要な服にはきちっとアイロンをかける。それが大人のエチケットではないでしょうか」
だから白いTシャツは毎年更新するし、人の家を訪問するときは真新しい靴下で。そんな心配りが引田さんのおしゃれのベースにあるのです。
■ルール4■
好きなモノ、好きな気持ちを大切に
ギャラリーを主宰し、たくさんの作品を見たり、人に会ったりするのが引田さんの仕事。だから家にいるときには、シンプルに少なめなモノと暮らしたいのです。好きな服も時が来たら、人に譲ったり、引き取ってもらったりすることが多いけれど、かごはちょっと別物のようです。
「ギャラリーで年に一度、かごの展覧会を8年続けました。その資料として必要ということもありますが、かごが大好きなんです。半分くらいは手放し ましたが、いまでも30くらいは持っているかな。各地各国の作り手さんたちが手をかけて、愛情をもって作ったものは美しく、いくら見ても飽きません。誰かに差し上げても喜ばれるし」
好きという気持ちを大切にしながら、モノを停滞させずに気持ちよく暮らす。そうしてできた心の余白が、人への思いやりにもつながるのでは、と引田さんは信じているようです。
『クウネル』2022年11月号掲載
写真/柳原久子、取材・文/船山直子