毎日の暮らしや身のまわりのこと、機嫌よく整えられていますか? 体力や気力が若者のころとは違うと感じても、いまの自分に無理のないやり方で日々を気持ちよく。一日の終わりにフックにひっか けて乾かす。小さなストレスを見逃さない気持ちが大事。クウネル世代の整え上手が実践している生活のルール、参考にしたいことがいっぱいです。
ワタナベマキ
料理家 46歳
素材を生かした作りやすくていねいな家庭料理レシピを提案。近著に『きれいに年を重ねるためのたんぱく質ごはん』(家の光協会)。 2匹の猫の飼い主でもある。
■ルール1■
形を揃え、サイズを選び、小さな工夫で快適な場所に
最近、築30数年のヴィンテージマンションに引越しをしたワタナベマキさん。リビングとの間の壁を取り払って、キッチンをリノベーションしました。
「以前住んでいたところのキッチンと大きくは変わらない」けれど、要所要所にグリーンが置かれ、きれいな竹細工のバスケット、ガラスや陶器のつぼが印象的です。 「どの部屋よりも長くいるのがキッチン。機能的であることは大切ですが、 居心地がよくて、遊び心もある場所にしたいですよね」
気持ちよいキッチンであるための心がけはいろいろありますが、意外なことのひとつは使う調理道具が驚くほど小ぶりなこと。まな板は18センチ四方、使うのはペティナイフや直径14センチのストウブの鍋。
「小さいほうが使いやすく、かさばらない。人家族なのですが、これくらいで十分です」
しょうゆ、みりんといった調味料は同じ形の瓶に入れ替えて市場かごに収納。瓶を取り扱う専門サイトでちょうどいいモノを調べて買い揃えました。
「ばらばらの形の瓶より、置き場所をとらず、見た目にも心地いいです」 そんな小さな積み重ねがキッチンの心地よさの秘訣のようです。
■ルール2■
納得のいく道具に 出合うまであきらめない
料理家として撮影やメニュー開発に忙しいワタナベさんにとって、調理道具は仕事の大切な相棒です。
「必要な道具でも、とりあえずこれでいいや、というものは買わないようにしています。しっくりこない道具は結局いつの間にか使わなくなってしまいます」
でもヘラとかピーラーとか、ないと困るのでは?と聞くと「ない間は我慢するかな。不便なままで過ごしたりしますね」。徹底しています。
写真の道具はそんなワタナベさんのお気に入りの調理道具。左からつめとつめは柄の長い計量スプーン。細長い瓶の中身もストレスなく取り出せて愛用。右端のフライ返しは密着感がよくてきれいに返せます。妥協なく選んだだけある、優秀な道具たちです。
■ルール3■
ごみを減らして、気持ちよく
台所仕事につきものの生ごみの処理は面倒なもの。ワタナベさんは生ごみ乾燥機を使い始めました。
「前のマンションはシンクにディスポーザーがあり、生ごみの処分はそれほど負担ではなかったんですが。この家で暮らすようになって、思い切って生ごみ乾燥機を買ったら、とってもいいんです。夜、その日に出た生ごみをセットしておけば、朝にはからからに乾燥していて、臭いもありません。植木にやれば肥料にも」
ペットボトルの処理にも辟易していたワタナベさんが今気に入っているのが、袋入りの水。料理やお茶にはこの天然水を使う。ボトルを潰す手間が省けごみも減って、ほくほく顔です。
■ルール3■
いることが楽しくなるキッチンに
ガスコンロの脇にずらりと控える作家モノのつぼにはさまざまな種類の塩や砂糖を入れて。おひつの上にちょこんとのったガラスの米びつは、金沢在住の人気ガラス工芸作家・辻和 美さんの作品です。
またカウンターの上では蠣﨑マコトさん作のガラス容器の中で梅シロップが作られ、キッチン横の窓辺には、やはり人気ガラス作家のピーター・アイビーさんの大ぶりのジャーも控えています。
好きな器や陶芸品、きれいな形のかごに囲まれて、「キッチンにいることが楽しくなるようにしています」とワタナベさん。機能性と美しさを兼ね備えたモノたちに囲まれて、ますます料理の腕に磨きがかかりそうです。
『クウネル』2022年11月号掲載
写真/柳原久子、取材・文/船山直子