あの人の本棚を見たい!と思う人たちの自宅やアトリエを取材しました。みなさん本が大好きで、それぞれにスタイルが確固としていて壮観!本と向き合う豊かさを噛みしめられます。
かの香織/かのかおり
音楽家・日本酒蔵元12代目
作詞作曲家、シンガー、音楽プロデューサーとして長らく活躍する一方、宮城県で生家の蔵元を継承する日本酒蔵人でもある。12月21日に、Blu-ray映像付き3枚組ベストアルバムをソニー・ミュージックよりリリース。
減らして減らして残る本が暮らしの糧に
もう10年ほど、周りのものを消去法で整理しています。どうしても捨てたくない本だけを家に置くように。少なくても十分なんです」かの香織さんは引っ越しごと、本棚は実家の会社に送ったり、本も何百冊ずつ処分してきたそう。自宅に残した本は今、本棚と見立てたリビングのベンチに、大判中心に40~50冊。他にローテーブルにコンパクトサイズの読み物類をランダムに積み重ねています。
「主に好きな建築家、デザイナーの本、写真集です。この後の人生を楽しくシンプルに暮らしたい希望を叶えるために必要な本に絞って。神保町の古書店や、旅先の空港などで見つけた、思い出もある個人的な貴重本ばかり」
ビジュアル本に混じって詩集が数冊。
詩の本、引き継いだ家業に繋がる日本酒の本もありますが、ビジュアル本が大半。実はそれには理由があって。
「本は大好きなのですがもともと私、難読症で文字いっぱいの本は読みづらくあまり手に取らなくて。文章で情報を取り入れたい本はKindleの読み上げ機能やオーディオブックを活用することが多いんです。上手に使えば、年齢を重ねた人の役に立つやさしいツールだと思います」
無造作に重ねる実用的な本も厳選
必要な本を選ぶ決断を冴えさせ、足りる量の蔵書で暮らす。かのさんスタイルは特別なようで、現代ブックライフへの賢い提案の一つと言えそうです。
『クウネル』2023年1月号掲載
写真/玉井俊行、取材・文 /原 千香子