【マチュア世代へ…おやすみ前のミニエッセイ】随筆家・山本ふみこさん「はがき、大好き!」

はがきを書く

Short Essay:
はがき、大好き!

朝顔の初咲きでーす。 と元気な文字の踊るはがきが友人から届きました。 何かを貼りつけて剥がした跡があり、ほかには何も書いてありません。

ん?……どうやら貼りつけたブルーの朝顔の押し花が、剥がれてしまったみたいです。 剥がれてなくなったってなんだって、うれしいじゃありませんか。わたしはこういう便りが大好きです。

はがきを、子どものころからよく書きました。 はなれて暮らす両祖父母に書いたのがはじまりです。

祖父母たちはすぐに返事をくれました。 直接会うことはなかなかかなわなかったけれども、はがきのやりとりのおかげで、 大事な何かがきゅっとつながっていたような。

大人になってからも、わたしははがきを贔屓しています。はがきは、ほら、届いた先で誰が見てもかまわない、という佇まいです。

だからこそ、こちらの気持ちを過剰に表現することなく、坦々と綴ることになります。

夫のははが3年前に入院したとき、わたしにできることは「はがき書きだ!」と思いつきました。

まいにちまいにち、下手くそな絵入りのはがきを書いては投函しました。

昨年ははが亡くなったとき、文箱から、束ねたはがき94通が出てきたのでした。

文/山本ふみこ、写真/久保田千晴

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