ユキ・パリスさんの京都アンティーク案内。“もの”の真髄に触れられる場所『ギャラリー啓』

アンティークへの造詣の深さと圧倒的な審美眼を持つユキ・パリスさんに、目と心を肥やしてくれる、京都のとっておきの場所に案内してもらいました。

PROFILE

ユキ・パリス/ゆき・ぱりす

『ユキ パリス コレクション』 オーナー。1970年、結婚を機にデンマークに渡り手仕事に魅了され、展覧会の企画等を行う。2002年、「ユキ・パリス コレクション」をオープン、多くのファンを持つ。

古今東西の美しさと出合える場所へ

友人を介して出会った、旧知の仲。川崎さんの手にあるのは、仏様を祀る、小さな厨子。

銀閣寺の近く、緑豊かな哲学の道でミュージアムとショップを営むユキ・パリスさん。培われたセンスは多くの人の憧れです。長きにわたり収集してきたアンティーク。その魅力を伺うと「人の歴史は、ものをつくってきた歴史。思いを形にできることが、人の偉大なところ。精神性の宿るものは100年経っても心を打ちます」と、話してくれました。

「かつて都だった京都は美しい街。東京はビルの中にお店がありますが、京都はアプローチから素晴らしい。老舗が集まる寺町通、哲学の道もそう。京都を巡る楽しみですね」

今回、案内してくださった場所がまさにそう。知見を深めるために大事にしている、ユキさんのとっておきです。

「どちらにも共通するのは、ひとつの道を究めていること。時を経てきたものの心を次へつなぎたいという思いを感じます。どんな時代に、なぜ生まれたのか。背景にある歴史や文化がわかると見え方が変わります。ものの真髄に触れることこそ、醍醐味ですね」

心惹かれたら、どんなものか尋ねてみる。それが始まりになります。

「いいものを愛でると、自然と笑顔になれます。美しく年を重ねたい方におすすめしたいですね。素敵な店主の店は入り口でわかる。好きな場所を見つけたら、通ってみてください」

自然布と骨董を扱う『ギャラリー啓』

ユキさんの目にとまった銀鏡。「朽ちかけてアートのよう」。

草木の繊維から糸をつくる、自然布と呼ばれる古布や骨董を扱う『ギャラリー啓』の店主・川崎啓さん。「確かな知識とものへの慈しみをもつ人」とユキさんが信頼を寄せます。

糸巻きなど、生活が垣間見える民具も。

苧麻や大麻、藤といった自然布を主に扱う。「植物を糸にするのは大変な作業。よこしまな心ではつくれない。だから美しいのだと思います」と川崎さん。

使い終えた大福帳を細く裂いて撚り、糸にしたもの。「新たな役割を与えて使い尽くす。昔の日本は持続可能な暮らしでしたね」

川崎さんは元は革工芸作家でしたが、素材として出合った古布に惹かれて転身。「着物だと着られるかどうかで見られてしまうのでほどいて、手に取って布そのものを見てもらえるように」。ひたむきな美しさが感じ取れます。

ギャラリー啓

住:京都市中京区寺町通夷川上ル久遠院前町671-1
営:12:00~18:00
休:月・火曜
10/7~16「高宮布展」開催  http://gallerykei.jp

『クウネル』11月号掲載 写真/大段まちこ、取材・文/宮下亜紀

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『クウネル』No.123掲載

私のとっておきの京都

  • 発売日 : 2023年9月20日
  • 価格 : 980円 (税込)

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