脳がクリアになる感覚。タスマニアの「世界で2番目に美しいビーチ」で冷水セラピーを体験

灯台守の家が夕焼けに照らされている

「冷水セラピー」って聞いたことありますか?オーストラリア大陸のタスマニア島にあるベイ·オブ·ファイヤーズという浜辺での冷水セラピーの体験レポートです。「一度のセッションが、人生を変えてしまったと言えるかもしれません」というほど衝撃的なその内容は!?


オーストラリア大陸
タスマニア島のベイ·オブ·ファイヤーズ


ベイ·オブ·ファイヤーズの灯台からの眺めは岩山と緑が溢れている
エディストーンポイントの灯台からの眺め。

世界で二番目に美しいビーチ

オーストラリア大陸の南、南極海に浮かぶタスマニア島の北東部にベイ·オブ·ファイヤーズという美しい浜辺があります。海は青く澄み、砂は輝くように白く、地衣類が表面をオレンジ色に染めた花崗岩が風景にアクセントを刻んでいます。イギリスの権威ある旅行雑誌によるランキングで「世界で2番目に美しいビーチ」に選ばれたこともあります。

「火の入り江」の名は、1773年にイギリス人航海者トバイアス·フルノーがこの海岸でアボリジナルの人々が焚くたくさんの火を見たことに由来すると言われています。先住民パラワの言葉でこの湾は 「ラプラナ」と言いますが、彼らがこの地名を口にするときには、大切な人に甘い言葉をささやくような響きがあります。

ヒースの深い緑と海のが一望できる
ヒースの深い緑と海の透明感のある青がコントラストをなす。
灯台守の家の前でワラビーがいる
灯台守の家の前でワラビーがお出迎え。
灯台守の家が夕焼けに照らされている
灯台守の家は19世紀に建てられたものをリノベーションした。
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呼吸法と冷水浴を組み合わせた健康法

湾の北の端にある岬エディストーンポイントにある19世紀の灯台守の家(今は改装されて宿泊施設になっている)で、ワイルド·ウェルネスのユニークなセッションに参加しました。時は5月の半ば、南半球は晩秋から初冬に向かう季節でした。

ピート·ブロッカーさんがインストラクターを務める「コールド·ウォーター·セラピー&ブレスワーク」はその名の通り、呼吸法と海での冷水浴を組み合わせた健康法です。元々は「アイスマン」として知られるオランダ人、ヴィム·ホム氏が開発したメソッド。

ブロッカーさん自身、ある時期、仕事に打ち込むあまり、心身のケアを怠り、健康を害したことがあるそうです。「50歳の時、リンパ腫と関節リウマチになりました。さまざまな治療法や健康法を試す中で、このメソッドと出会って健康を回復することができたのです」とブロッカーさん。

ピート・ブロッカーさんが立っている
ピート・ブロッカーさん。
参加者が仰向けになって深呼吸をしている
呼吸に意識を向ける参加者たち。
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セッションの前半は室内で行われました。仰向けになり、片手を胸に、もう片方の手をお腹に置いて、強度の高い、長い深呼吸を繰り返します。3分間ほど続けた後はそのまま目を閉じ、長く穏やかな呼吸をしながら自分の心身の声に耳を傾けます。

これを続けると体が温まり、汗が出てきました。7~8セット行ううちに、目の前の霞が晴れたように頭がスッキリしていることに気づきました。ここまでで約1時間が経過。

セッションの後半は、水着に着替え、徒歩で10分ほどのところにあるビーチで行います。砂浜で簡単なストレッチを行った後、ブロッカーさんに導かれて水の中へ。晴れて外気は暖かく、水面は凪で真っ平でしたが、水温は15℃ほど。

冷たく感じるのは最初だけ

足首まで浸かっただけでも体がこわばります。「大丈夫、ゆっくりと呼吸をして、自分の肉体を信じることです」とブロッカーさん。彼の穏やかな声に励まされて、言われた通りにすると、不思議なことに冷たさが次第に平気になったような気がしてきました。

遠浅の海をさらに沖へと進み、腰から胸まで水に浸かりました。顔を海水で洗い、呼吸に意識を集中しながら、ゆっくりと全身を水の中に沈めます。

水の中にいたのは5~6分間でしょうか。歯の根が合わぬほど震えたのは最初のうちだけで、冷たさは意外なほど平気でした。水から出て、タオルで体を拭く頃には全身がポカポカとして、自分の体が正常に体温調節をしようとしているのが分かりました。

そして、なんといっても、気分が爽快だったのです。その感覚をつぶさに言葉にするのは難しいのですが、自然と一体化した感覚と自分の心身を信じることができた充足感がないまぜになった感覚とでも言えばいいでしょうか?

何とも言えない爽快感が続く

このセッションは午前中に行われたのですが、その日は終日、素晴らしい気分のままに過ごすことができました。 変性意識状態と言っていいと思います。そして、ありがたいのはその効果がその後も続いているように感じていることです。

朝の海が広がっている
静かな朝の海に入っていく。
海に入る人々
自分の体を信じると、冷たさが和らぐ感覚が。
緑と大空が広がっている
セッションを終えると足取りも軽くなった。
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旅行を終え、日本に帰国した後も、頻繁に呼吸に意識を向けるようになりました。夏の間は屋外プールに足繁く通いましたが、これまでは楽しめなかった雨の日や気温の低い日のプールがかえって好きになりました。大袈裟に響くかもしれませんが、タスマニアで参加したたった一度のセッションが、人生を変えてしまったと言えるかもしれません。

写真・文/浮田泰幸、取材協力/オーストラリア政府観光局

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