料理家・作家の樋口直哉さんが映画『レミーのおいしいレストラン』の料理、ラタトゥイユを再現!
「観ると料理を作りたくなるのがおいしい映画」という樋口直哉さんが『クウネル』2026年11月号の「クウネルチョイス・シネマ」ページのインタビュー時に作ってくださったラタトゥイユ。おすすめの映画『レミーのおいしいレストラン』の物語に大きくかかわる料理で、ただ、多くの人がイメージするのとは違うスタイリッシュなラタトゥイユでした。作り方を教えてもらいます!
『レミーのおいしいレストラン』
シェフになりたいと夢見るネズミ、レミーは家族や仲間たちとはぐれてしまいパリの憧れのシェフ、グストーの店に流れ着く。亡きグストーの息子だが料理経験のないリングイニと出会い、彼を助けて料理を作ることに。そのおいしさは評判になり店ははやるけれど……。Pixerのアニメーション映画。
ディズニープラスで配信中 © 2026 Disney/Pixar
グルメ映画のカギを握るのは料理監修者
この映画の料理監修はスターシェフ、トーマス・ケラー。映画のラタトゥイユは彼の有名なレパートリーのひとつからアレンジされたもの。
「彼のレストラン、『フレンチ・ランドリー』では下にピペラード(ピーマンとオニオンなどのコンフィ)を敷き、表面に野菜を並べていますが、映画版ではさらにアレンジされ、ピペラードをベースにしたソースを注ぎ、焼き上げていました」
樋口さんはトーマス・ケラーのクックブックにあるオリジナルを参考にしながら、映画に登場するラタトゥイユに近づけた出来上がりをイメージ。
野菜だけで奇跡は起こる? 材料はシンプル。
ラタトゥイユ は映画の中でレストランの存続をかける料理として登場。レミーが渾身の力で作りました。
家庭料理をベースとした料理がさまざまなリスペクトや情熱、アイデアを吹き込まれて夢をのせる、その材料は野菜だけなのです。
樋口さんが再現したラタトゥイユ のレシピをご紹介します。
【材料(作りやすい分量)】
なす…2本(長いものなら1本)
緑ズッキーニ、黄ズッキーニ…各1本
加熱用イタリアトマト(なければ大きめのミニトマト)…4個
〈ソース〉
赤パプリカ…1個(150g相当)
玉ねぎ…小1個
にんにく…2片
EVオリーブオイル…20cc(約大さじ3)
塩…2g
こしょう…適量
【作り方】
1_赤パプリカと玉ねぎは薄くスライスする。にんにくもスライスし、蓋ができる鍋に敷いておき、パプリカ、玉ねぎを重ねる。
2_加熱用のトマト(水分が少なく仕上がりがきれい)を湯むきし、よく切れる包丁でスライスする。厚さは2mmを目安に。緑、黄のズッキーニ、なすも同じ厚さでスライス。
3_野菜をスライスした端の部分や形の悪い部分なども一緒に1の鍋に入れ、蓋をして中火にかける。ぱちぱちと音がしてきたら弱火に。ときどきかき回しながら10~15分間野菜の水分で蒸し煮にする。野菜がすっかりやわらかくなればOK、これがピぺラード。
4_ミキサーに移して、塩2gとEVオリーブオイルを加える。オリーブオイルを最後に入れることで香りが生きる。ミキサーでなめらかにしてからこしょうを加えて味見して、ソースの出来上がり。
5_オーブン皿(スキレットなどがおすすめ)にソースを敷く。多すぎると野菜が煮えるので最大8mm見当で浅めに。均等でなくてもOK。
6_トマト、茄子、緑ズッキーニ、黄ズッキーニ、トマト……と野菜のスライスを同じ順で均等にずらしながらソースの上に一枚ずつ並べていく。ある程度の枚数を手の上で重ねてから皿に移すと早い。外周に沿って一周並べたら、中心部は逆回りになるように並べる。
7_一面に並べたらオリーブオイル(分量外)をまんべんなくかける。オイルの前にローズマリーを散らしてもいい。
8_焦げないようにオーブンペーパーをかぶせ、150度のオーブンで1時間焼く。焼きあがって味が足りなければ、フルール・ド・セルをふりかける。
9_セルクル型を使って映画の仕上がりにより近づける。8をパレットナイフでごそっとすくいとり、セルクル型の中に移しこんもりと重ねその後、型をはずす。
10_バルサミコ酢とオリーブオイルを1:1でまぜたものをふりかけ完成。映画により忠実にするならシブレット(チャイブ)を上に添える。
出来上がり!
作るときのポイントと料理の背景は
「ソースは多めにできます。焦げやすくないので多めのほうが作りやすい。残ったソースはビネガーを少し加えると魚料理や肉料理など万能のソースになります」
きれいに作れるかの分かれ目は?
「野菜の太さが揃っているとスライスの大きさが均一になりきれいにできますね」
作るだけでも楽しい料理と言えそう。セルクルを使って映画に近づけた仕上げにしてもいいし、オーブンから出したままサーブしても驚きがあります。
はっとする華やかさと、野菜だけなのに複雑な味わいがあって、豊かな気分に。
レストラン文化のなかで洗練され、さらに映画でポピュラーに表現された料理……。
映画にマジックをかけたこの、レミーのラタトゥイユ。シンプルな作り方だから、映画を観てからトライしてみて。
PROFILE
樋口直哉/ひぐち・なおや
料理家・作家
2006年『さよなら、アメリカ』で群像新人賞を受賞し作家デビュー。料理家としてはNHK『激突メシあがれ』などへ出演、『もっとおいしく作れたら』(マガジンハウス)、『日本の定番料理10の謎』(NHK出版)など多数の著作がある。
写真/樋口直哉(材料)、玉井俊行、取材・文/原 千香子