お店の場所は清澄白河駅と森下駅の間、隅田川のほど近く。周辺には元倉庫をリノベーションしたカフェ『iki Roastery & Eatery』やロースイーツパティスリーの『POSH』、ヴィーガンジェラートショップの『TUTTO』などがあり、ここ1〜2年で話題の新店が続々オープンしている注目のエリアです。

『Farm to Me』の建物は、日本を代表する建築家・新居千秋氏によるもので、バイオフィリア（自然や生物同士の結びつきを求める生命愛）をテーマにしているそう。外壁は季節ごとに花を咲かせるものや葉の色を変える植物を混植し、四季を演出しています。

『Farm to Me』は1階がベーカリー、2階がワークショップなどの開催も行う商品開発ラボ、3階がレストランになっています。ベーカリーを取り仕切るのは、食べログ百名店とパン屋大賞を受賞したこともある東京大丸にあった『カーラ・アウレリア』をけん引してきた藤枝敏郎シェフです。

店頭ではバゲット、カンパーニュ、ライブレッド、ブリオッシュ、高加水パンという5つのキーブレッドをはじめ、常時40〜50種類ほどのパンやサンドウィッチ、焼き菓子ほか、国産小麦や紅茶、体に優しい砂糖などのアイテムも並びます。

パンのこだわりは藤枝シェフが産地を訪問し厳選した、国産小麦粉や安心・安全で信頼できる食材を使用していること。また、経営母体の大東製糖が製糖メーカーということもあり、前身の『カーラ・アウレリア』に引き続き、ミネラルを豊富に含む黒糖の一種である含蜜糖を使用しています。特に含蜜糖の丸い甘さや色合い、機能を活かした全粒粉パンは注目です。

イギリスの「ロンシャンの礼拝堂」をイメージしたという階段を上ると、個室を備えた商品開発ラボが現れます。こちらではお菓子やサンドウィッチ、缶詰の製造を行い、その様子を見学することができます。スタジオ機能をもつ個室では食育セミナーや、パン作りのワークショップなどを実施予定とのこと。個室は「時間・出会いの循環」をテーマに、多方向から差し込む複雑な反射光を活かして二十四節気を表現しています。

3階は大東製糖がサトウキビを自社栽培している、種子島の風土をイメージした内装のベーカリーレストランになっています。しかも目の前に隅田川が広がる、窓一面のリバービューという特等席！

レストランは地産地消のイタリアン『アル・ケッチァーノ』の奥田シェフが監修。料理長を務める相良忠政シェフはイタリアで修業後、奥田シェフが監修した石川県白山市にあった『イル・ケッチァーノ』（現在閉店）で料理長を務めた経歴を持ちます。

ランチコースは、キーブレッド5種の食べ放題とそれに合わせたスプレッドが6種、サラダとスープ、料理を2種類選べて2,200円。スプレッドは、月の雫の塩とバター、ファットリア・ビオさんのリコッタフレスカ、庄内ポークのリエット、ヒヨコ豆のなめらかフムス、長野よりルバーブのジャム、シチリア産オーガニックオリーブオイルの6種類。カンパーニュにはリエット、高加水パンにはフムスというように、おすすめの組み合わせもメニューに書いてありますが、自分好みの組み合わせを探すのもまた楽しいものです。

料理は「西森さんのフルーツトマトとファットリア・ビオさんのモッツァレラ、生ハムのカプレーゼ風」「素焚糖と天然塩でマリネしたサーモンの燻製と骨135℃」「庄内豚の田舎風テリーヌ キャロットラペとピクルス添え」「千葉より スズキのグリル パプリカのローストとタプナード」「米沢牛と天元豚のポルペッティ クレソンのサラダ トマトソース」の5種類の中から2種類を選べます。

今回私はカプレーゼとテリーヌを選んでみましたが、どちらもパンの味わいに寄り添うような端正な味わいで、食材の味を引き出すシェフの腕の高さも感じました。

またそれぞれの料理には、大東製糖が生産するサトウキビからできた砂糖、お酢、ラム酒などを使用。ディナーでも日本各地の食材を活かした、パンや紅茶と高め合うコース料理が味わえます。

さらに建物の屋上はテラス席になっており、ベーカリーで購入したパンやドリンクを味わったり、レストラン利用の人がお酒を嗜んだりすることができます。目の前には大パノラマの隅田川が広がり、清洲橋や新大橋を望むことができる絶好のロケーションです。

レストランはランチもディナーも予約が可能とのこと。リバービューの特等席で、名シェフ監修のパンを引き立てるイタリアンが味わえるとあって、すぐに人気を集めそうです。

写真・文／中森りほ