食材の持ち味を生かし、どこでも手に入れられる調味料を使ったレシピに定評がある料理家の大庭英子さん。その料理は思わず「おいしそう!」と口にしてしまうほど、どこかダイナミックなビジュアルで、実にそそられます。
長年、第一線で活躍され、数多くのレシピ本を出版されていますが、今年6月に新刊『68歳、ひとり暮らし。きょう何食べる?』を上梓されました。
長年の経験を基に提案するのは、ひとりごはんを愉しむための工夫やアイデアなど。
シリーズ第4回は大庭英子さんへのインタビュー前編をお届けします。
前回までの記事(『68歳、ひとり暮らし。きょう何食べる?』より)
1)【大庭英子さん・68歳、ひとり暮らし。きょう何食べる?】料理家に教わるひとりごはんの愉しみ方。
2)【大庭英子さん・68歳、ひとり暮らし。きょう何食べる?】vol.2「揚げ物はまとめて揚げると二度楽しめます」
3)【大庭英子さん・68歳、ひとり暮らし。きょう何食べる?】vol.3「煮物はたっぷり。時間が経ってもおいしく食べられます」
■ひとりごはんを楽しむには、無理せずできる範囲で。
ーーご著書『68歳、ひとり暮らし。きょう何食べる?』拝読しました。大庭さんはレシピ本はたくさん出版されていますが、こういったご自身にまつわる内容の本というのは拝見したことがなく、新鮮でした。タイトルと表紙写真も印象的ですね。
大庭さん(以下、大庭): ありがとうございます。普段はレシピを中心にしたものが多いので、確かにあまりないかもしれませんね。
「はじめに」にも書いているのですが、私は仕事柄、日々たくさんの料理を作っていますが、実生活ではひとり暮らしで自分ひとりの料理を作って食べています。
そこで、実際に私がやっていることを中心に紹介しようということでスタッフさんと進めて決めていきました。
ーー冒頭の「ひとりごはんを作りたくなる工夫」も分かりやすかったです。とくに伝えたいポイントなどはありますか?
大庭:家族など誰かのために作るのとは違って、自分ひとりだとどうしても億劫に感じたり面倒だったりしますよね。
だから、無理せずできる範囲でいいと思います。あれこれ作らなくても、主菜と副菜の2品で十分。栄養バランスは1日単位、1週間単位で考えるくらいでもいいと思います。
ーー具体的なレシピを考える際に気を付けたことなどはありますか?
大庭: ひとり分ということに関わらず、具材も調味料も少なめに抑えた料理が好きなので、この本で紹介しているレシピもそれ自然とそうなっていったと思います。
いろいろなものを入れると味がぼんやりして、メリハリがなくなってしまう気がします。単純な味のほうが繰り返し食べたくなり、食べ飽きることもないと思うんです。
ーーたしかに、レシピ内で使用している調味料の種類も少ないですね。物足りないと感じることはないのでしょうか?
大庭:私は素材の味を楽しみたいので、肉や魚などが入る場合は、だしを使いませんし、塩、こしょうでシンプルにいただくことも多いです。
ただ、塩味が薄いとどうしてもぼんやりしてしまいますね。だから私は、レシピには書かない自分ひとりで食べる料理を作るとしても、食材の重さを必ず計り、塩もきちんと計って加えています。
基本は、「重量に対して0.5~1%の塩」と覚えておくといいですよ。それが頭に入っていれば、いつでも、ちょうどいい塩味で作れると思います。
■適量を把握して買い物、調理することを心がけて。
――冒頭のページで、ひとりごはんを楽しめない理由のひとつが「買いすぎ」という言葉があり、それも印象的でした。
「いろいろな食材を買ってくるのはいいけれど、調理しきれずダメにしてしまって自己嫌悪に陥る……ということがありますよね。その積み重ねで料理すること自体が楽しくなくなってしまう。
それを考えると、多少は割高だとしても小さめのパックのものを買って使い切ることのほうがずっといいですね。
自分が食べる量、消費できる量を把握しておくことが大事。鮮度を鑑みても少ない量のほうがいいと思います。
たとえば、お米。私は仕事で消費する量は多いほうですが、毎回、必ず2㎏で購入しています。調味料も同じ。酸化してしまうと味が落ちることもあり、大容量のものはほとんど買いません。
――たしかに。大容量でお得なものなどを見るとついつい買ってしまいますが、食べきれないということ、よくあります。
――大庭:そうですよね。それから、買い物とはまた少し違う話かもしれませんが、お腹が空きすぎていると、ついつい適当なものを食べてしまったり、買いすぎてしまったりということもある気がします。私もそう(笑)
だから私は、空腹になり過ぎるちょっと手前で、料理したり食事を考えたりするようにしています。ちょっとしたことですが、せっかくの食事だからこそ、おいしくて身体にもいいものを食べたいから。そういうことにも意識するといいかもしれませんね。
■ひとりでも使いやすい食材を上手に活用して。
――大庭さんが「これは必ず欠かさない」という食材はありますか?
――大庭: そうですね。プライベートでもよく使うのは卵ですかね。
卵は日持ちもするし、栄養バランスもよい。さまざまな料理に使えて、メインにもサブおかずにもなる優秀な食材です。組み合わせる食材によってはおもてなしにもなります。
私はよく、卵炒めやだし巻き卵などもよく作るのですが、これらに、熱々ごはんと汁ものがあれば、立派な献立になりますよ。
それから、乾物好きなので、切り干し大根、ヒジキ、乾燥わかめ、高野豆腐、豆類などの乾物も必ずストックしています。
――乾物を使うときは1袋まとめて戻すということを紹介している章がありましたね。
――大庭:中途半端に残しておいても、そのまま使わず茶色くなってしまった……ということがありますからね。
定番の煮物もいいけれど、甘酢ではりはり漬けにしたり、牛肉と合わせて炒めてチンジャオロースー風にしたりと、 さまざまに楽しめますよ。栄養とうまみが詰まった戻し汁も捨てずに調理します。
――缶詰めやソーセージやベーコン、じゃこやしらす、桜えびなどの加工品も上手に使うといいと紹介されていますね。
――大庭:そうですね。肉や魚、野菜などの生鮮食品は早めに使い切らなくてはいけないけれど、多少、日持ちする食材があると安心ですね。
冷蔵庫に肉や魚がないというときや、今日は買い物に行けないというときにも、これらの食材があれば重宝すると思いますよ。
→インタビューは後半に続きます。
大庭英子/おおばえいこ
身近な材料と普段使いの調味料で作る家庭料理に定評がある。和・洋・中・エスニックのジャンルを超えた幅広いレシピの数々は、どれも自然体のおいしさで、いつ食べても飽きない味わい。みんなのために作る料理だけでなく、最近は自分のために作る料理の時間も愉しむ。
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68歳、ひとり暮らし。きょう何食べる?
料理研究家歴40年の大庭英子さんが、家で「ひとりごはん」を楽しむためのアイデアとレシピを紹介。
ひとり分でも飽きずに手軽に続けられる献立の組み立て方や、ひとりごはんに使いやすい食材の選び方や冷凍法、常備菜などについても幅広く提案している。
トップ画像撮影/邑口京一郎 聞き手/結城 歩