北海道のブドウ畑で造り手の話を聞きながらワインを飲む!

北海道のブドウ畑で開催された「シーニックバー北海道」に参加することに。ワイン好きにはたまらない!〈幻の〉ともいわれるワインを片手に、絶景のなか生産者のお話をお聞きしました。


イベント「シーニックバー北海道」に参加!


シーニックバー北海道というイベントで複数の人が参加している様子
ブドウ畑を眺めながら飲むワインは最高!

8月半ば、「シーニックバー北海道」というイベントに参加しました。これは毎回北海道内のワイナリーや牧場など、生産の現場を訪ね、絶景の中で生産者自身による話に耳を傾けながらを聞きながら飲食を楽しむという、ワイン好きや食いしん坊には夢のような企画です。

この日の目的地は、入手困難で知られる白ワイン「クリサワブラン」を造るナカザワヴィンヤードでした。

「クリサワブラン」を飲んで、北海道でもこんなに素晴らしいワインが造れるのかと驚嘆し、ワイン造りの道に入ったという生産者が何人もいます。このイベントを立ち上げた川口剛さん(札幌市内でバル「バルコ札幌」を経営)は「ワインはそれが造られた土地で飲むのが最高ですからね」と、今回のプランの魅力を語ります。

ワインという飲み物が嗜好品である前に農産物であると考えるなら、やはりブドウが育った土の上で、ブドウと同じ日差しを浴び、同じ風に吹かれて飲む、つまり「テロワール」とか「ティピシティ」という言葉で表されるものの一部に自分自身がなって飲む、それに勝る飲み方はないということでしょう。

集合時間よりも少し早めに札幌市内の集合場所に着くと、貸切バスが停まっていて、すでに数人の参加者が乗車していました。点呼を終えると、バスは一路東へ。

右から、中澤一行さん、由紀子さん、川口剛さんがキッチンカーを囲んでいる
右から、中澤一行さん、由紀子さん、川口剛さん。実は川口さんのバルは「世界で唯一、クリサワブランがいつでもグラスで飲める店」です。
畑の真ん中で説明をする一行さんの話を聞いている参加者立っている
畑の真ん中で説明をする一行さん。
畑のそばに停められた「シーニックバー北海道」のキッチンカー
畑のそばに停められた「シーニックバー北海道」のキッチンカー
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小一時間で岩見沢市に入りました。岩見沢市とお隣の三笠市にはここ20年ほどの間に品質の高いワインを造る小規模造ワイナリーが相次いで誕生し、余市・仁木エリアと並んで、北海道2大ワイン産地の一角を形成しています。

南幌町を抜け、きらら街道から坂になった私道を登ると、目の前が忽然と開け、ブドウ畑が現れました。「美味しいワインが生まれるブドウ畑にはオーラがある」とよく言われますが、青空の下にバーンと広がったナカザワヴィンヤードの畑からもえも言われぬ〈輝き〉が感じられました。

中澤一行さん・由紀子さん夫妻がワインを片手に微笑みながら並んでいる
由紀子さんのTシャツに描かれたウサギはブドウ木を齧ってしまう厄介な害獣でもある。

中澤一行さん・由紀子さん夫妻がにこやかに出迎えてくれました。さっそくブドウ畑を歩きます。ちょうどブドウの果粒が膨らみきり、房が重みを増したタイミングでした。黒ブドウにはヴェレゾン(果粒が色づき始めること)が始まっていました。

ケルナーの果実が木にぶら下がっている
ケルナーの果実。
ヴェレゾンが始まった収穫前のピノノワール
ヴェレゾンが始まったピノノワール。
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「あちらの区画にはゲヴュルツトラミネールという品種が植わっています。房が小さくて収量は上がらないですが、ここの気候でも十分に熟し、華やかな香りを出してくれます。こちらの区画に植わっているのはケルナーです。栽培が難しい品種ですが、不作の年にもよく実って、我々を助けてくれることがあります」と一行さんが、まるで我が子のことを語るように説明してくれます。

「クリサワブラン2020」のボトルが3本並んでいる
「クリサワブラン2020」
中澤一行さん・由紀子さん夫妻がワインを片手に微笑みながら並んでいる
なぜか照れくさそうにワインを注ぐ中澤夫妻。
ワインによく合う惣菜がずらりと並んでいる
ワインによく合う惣菜とチーズ、パンがぎっしりと詰まったこの日のランチは、札幌の「ビストロカフェ+ギャラリー オマージュ」によるもの。
ワインが入ったグラス
色味にもどこが輝きが感じられる。
「ルージュ」のボトルが一本とワイングラス一個が並んでいる
「ブラン」以上に希少でなかなかお目にかかれない「ルージュ」。こういう珍品と出会えるのもこのイベントの魅力。
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「クリサワブラン」は数種のブドウを混ぜて造る混醸スタイルのワインです。混ぜることでワインに複雑味や奥行きを出すこと、畑全体の個性を十分に表すことが狙いとのこと。さらには、年ごとに大きく違う気候に対して、生育速度の異なる複数の品種で対抗し、不作のリスクを減らすという側面もあるようです。結果的にワインは年ごとに全く別の顔を持つことになりますが、それがまたこのワインの魅力となっています。

畑のそばにはキッチンカーが停められ、ロングテーブルが据えられていました。テーブルの上にはグラスがずらり。いよいよテイスティングの時間です。中澤夫妻が直々にワインをグラスに注いでくれます。キッチンカーからはランチボックスが配られました。

〈幻の〉と形容されることもある「クリサワブラン2020」で贅沢かつカジュアルな乾杯をしました。めざましい花と柑橘、パッションフルーツ、蜂蜜の香りがグラスの中から沸き立つように出てきます。草や森を思わせるトーンは、グラスの中から出てきたのか、この土地の空気からなのか判然としません。

口に含むと、この土地ならではの伸びやかな酸と心くすぐるような甘みが感じられました。陽性で旺盛なさまはあたかも北の大地を照らす太陽が液化したかのようでした。

「シーニックバー北海道」の参加者がテーブルを囲い賑わっている
どんどん打ち解けていく参加者たち。

この後も、「クリサワブラン2019」「クリサワルージュ(赤)2019」など数本の希少なワインが開けられ、グラスに注がれました。

それぞれのワインについて説明がなされ、最後には中澤夫妻も参加者の輪に入ってロングテーブルへ。いつしかそこはパーティのような雰囲気に──。

3時間ほどの滞在はあまりにも濃く、美しくて、あとから振り返るとまるで「一炊の夢」のようでした。

写真・文/浮田泰幸

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