東京・銀座のレストラン『FARO』で開催された、イタリア・トスカーナのプレミアム白ワイン〈ポッジョ・アッレ・ガッツェ・デル・オルネッライア〉の最新2020ヴィンテージのリリースに合わせたディナー会のレポートをお届けします。
6月某日、東京・銀座のレストラン『FARO』で、イタリア・トスカーナのプレミアム白ワイン「ポッジョ・アッレ・ガッツェ・デル・オルネッライア」の最新2020ヴィンテージのリリースに合わせたディナー会が開かれました。
「実は白ワイン好き」と言う能田耕太郎エグゼクティブ・シェフが用意した料理と共に、同ワインの4つのヴィンテージを存分に味わうという趣向でした。
「ポッジョ・アッレ・ガッツェ・デル・オルネッライア」を生産するオルネッライア社は、1981年、トスカーナの海岸沿い、ボルゲリ地区に設立。国際品種による極めて品質の高いワインを造り、後に「スーパー・タスカン」と呼ばれるようになる新潮流をイタリアワイン界にもたらしました。
よく知られるのはフラッグシップの赤ワインですが、「最良の白ワイン造り」にも大きな夢を抱いてきました。
桔梗紺で描かれたカササギのラベル画が印象的な「ポッジョ・アッレ・ガッツェ・デル・オルネッライア」は、1987年が初ヴィンテージです。
醸造責任者のオルガ・フサーリさんがイタリアからオンラインで説明をしてくれました。
「当初は100%ソーヴィニヨン・ブランで、ステンレスタンクのみで醸造していましたが、生産を一時的に中断していた6年間に、どうしたらボルゲリの風土を白ワインでももっと表現することができるか試行錯誤を重ねました」
「その結果、08年からは、他の品種──ヴェルメンティーノ、ヴィオニエ、ヴェルディッキオ──を加え、また、醸造にもステンレスタンクだけでなく、木桶やコンクリートタンクも使うようにしました。熟成中に樽の底に沈んだ澱を攪拌するというテクニックも取り入れました。そうしてワインに複雑性とクリーミーさを与えたのです」
食事の前に4つヴィンテージの比較試飲をしました。17年は、暑くて乾燥した夏だった影響で、良く熟れた果実香が特徴的で、デカダンな印象。18年は、雨が多かった年を反映し、やや細身。エキゾチックフルーツと麦の穂のような香りがありました。19年は、寒さと暑さが繰り返し、多雨と乾燥の両方を経験した難しい年だったそうです。ワインにはアーシーなトーンがあり、夏の終わりを思わせるような儚い印象が。最新の20年は、若草、白桃、パッションフルーツを思わせる溌剌とした香り。キー品種であるソーヴィニヨン・ブランの特徴が際立っているように感じられました。
ヴィンテージごとの違いはまるで別の銘柄のワインを飲んでいるほど大きなものでした。が、それはオルガさんたちがその年の気候の特徴を人為で曲げることなく素直に表した結果でしょう。そして、伸びた背筋のようなミネラル感と海を感じさせる塩っぽさは全てのヴィンテージに共通して感じられました。これこそがボルゲリという風土の特質に違いありません。
\能田シェフの料理も堪能/
前菜からメインまで白ワインだけで通すというチャレンジングなディナーでした。能田シェフのシグネチャー「じゃがいものパスタ」は「ポッジョ・アッレ・ガッツェ・デル・オルネッライア2020」とのペアリングでした。じゃがいもの持つ土の風味、イタリアの魚醤コラトゥーラの海の旨味、そしてリコリスの甘苦い後口がワインと絶妙の相性を見せました。
イタリアの白ワインはもっと称揚されて良いのではと、改めて感じる夜になりました。
取材・文/浮田泰幸