ガラス作家・イイノナホさんが、子供の頃からおしゃれな母の真似をして首に巻いていたというスカーフ。今回、そんなお母さまから譲り受け、娘さんにも引き継ぎたいほど大切にしているというスカーフを、思い出と共にご紹介いただきました。
イイノナホ
ガラス作家。武蔵野美術大学を卒業後、シアトルでガラスを学ぶ。
ハンドメイドで作る照明やアートピース、ペーパーウェイトなどが人気。東京・千駄ヶ谷にショップも。
https://www.naho-glass.com
「母の持ち物の中でも、印象的だったのがスカーフ。スカーフを巻く大人が素敵に見えて、なんてかっこいいんだって思っていました。
これは母が使わなくなったスカーフを姉と分けたときに、譲り受けました。赤色のスカーフも一緒に譲り受けたのですが、クローゼットにないと思ったら、娘が持っていって使っていましたね」
特に気に入っているのが、５頭の馬の後ろ姿が描かれた、エルメスらしいクラシックな柄。
シルクスカーフ“カレ”。「クラシックな柄が、絵画のようで素敵だなと思って気に入っています」
「エルメスでもいろいろな柄がありますが、馬をモチーフにした柄がいいなと思います。それなりに高価なものですが、こうして50年使えると思ったら高くはないですよね。
簡単に作られたものは、古くなるとただ古びて見えてしまいますが、建築でもなんでも、いいものは朽ちるのではなく、味が出てどんどん価値が出てくると感じます。大切に使って、娘たちに引き継いでいきたいですね」
シンプルな黒のレザーバッグに巻くだけで、いつもと違った印象に。「折り方によって印象が変わるのも、スカーフの面白いところ」
以前はスカーフを頭に巻くことも多かったイイノさん。最近は髪や体型を隠すスタイルは避けているそう。
「歳を重ねて、『女性らしさ』を楽しむのは素敵だなと思うようになりました。例えば洋服も、体型を隠すのではなく、女性ならではの線の美しさを楽しみたい。
一枚で女性らしさがアップするエレガントなスカーフなど、少し上質な素材のものを身につけて、身体の線が出る服を着る。そのためにちゃんと身体を鍛えると、生活にもハリが出る気がします。
限られた人生だから、母のように女性らしく、きれいにしていた方が自分も楽しいなと思います」
写真／鈴木静華 取材・文／赤木真弓 再編集／久保田千晴
