ジョン・F・ケネディの心も動かしたレイチェル・カーソン。自然を愛し、世の中を変えた【かっこよく生きるための言葉】
それぞれの時代で輝き、「かっこいい女性の生き方」を私たちに見せてきてくれた方々。自分の足で立ち、新しい道を切り拓いてきた彼女たちの言葉は力強く、示唆に富んでいます。生物学者 レイチェル・カーソンもその1人。改めてその生き様を振り返り、潔い言葉の数々を味わいましょう。
PROFILE
レイチェル・カーソン/れいちぇる・かーそん
生物学者
1907〜1964
アメリカの海洋生物学者・作家。ペンシルベニア州生まれで、母の影響で自然に親しんで育つ。作家志望で大学に進学するが、生物学者と出合い研究者を目指す。『潮風の下で』など海の三部作で作家としての地位を築き、周囲の反対を押し切って『沈黙の春』を出版。さまざまな問題を提起し、現在の環境保護運動の先駆けに。
自然の神秘を感じる心をバネに社会問題に切り込んだ。
本が、言葉が、世界を変える。1962年、生物学者のレイチェル・カーソンが放った一冊の本『沈黙の春』はその後の世の中を確実に変えました。当時広く使われていた殺虫剤や除草剤などの化学物質が、環境や生態系に与える影響を訴えたのが本書です。この告発は大きな渦をつくりました。現在に続く「環境問題」の礎を築き、20世紀後半、最大の問題提起の本とも言われています。
出版後は、非難が矢のように降ってきました。なかには「女のくせに」「プロの科学者でもないくせに」という不合理で感情的なものも。渾身の訴えは、巨大資本に握りつぶされそうになりました。しかし、ときの大統領ジョン・F・ケネディは、本の内容を認め、殺虫剤・農薬の使用規制を行う決定を下しました。有害物質の影響で「黙りこくった」森や川や海に、鳥や虫たちは戻り自然の歌を奏でるようになったのです。さて、その「にぎやかな春」の到来に間に合ったかどうか……。
出版からたった2年後の1964年、レイチェルは56歳で亡くなりました。執筆時は末期がんに侵され、そのほかにも体のあちこちに病が。自身でも「病気のカタログ」と評したように満身創痍で、命を削るように書いたのです。
『沈黙の春』に並ぶロングセラーといえば、『センス・オブ・ワンダー』。両者とも環境や自然が題材ですが、前者が「告発の書」であるなら、後者は自然を愛する心を開く書です。「環境教育の金字塔」と言われ、世界中の人々に深い気づきときっかけを与えました。
メイン州ブースベイ・ハーバーの別荘で。1962年撮影。写真提供/Getty Images
レイチェル・カーソンが残した言葉。
「見ようと思えばいつでも見られるからこそ、いつまでも見ないままになってしまう」ことを避けるための提言。「見る」のではなく、「感じる」ことの大切さを説いている。
女性ジャーナリスト協会主催の昼食会での講演の一節。自然の美しさがもたらす平安や効能について話し、環境破壊の道をたどらぬよう、自然を注視し続けようと講演を結んだ。
魂の友として親交を深めたドロシー・フリーマンへ最晩年にあてた手紙。病気についてはあまり話さなかった彼女が、自然の営みになぞらえ死について語った。
女性誌に掲載されたエッセイを、レイチェルの没後、友人たちが写真を加えて単行本として出版したもの。自然体験を通じて、感性を開き、自然を知る楽しさへと導く一冊。
『クウネル』2026年7月号掲載
取材・文/鈴木麻子
SHARE
『クウネル』NO.139掲載
これからを生きるための「言葉の力」。
- 発売日 : 2026年5月20日
- 価格 : 1,080円 (税込)