韓国映画『パラサイト 半地下の家族 』のアカデミー賞受賞を筆頭に、今世界中から注目され、高い評価を得ているアジア映画。情緒やバックグラウンドの共有だけでなく、多様性を感じられたり、未知との遭遇を楽しむことができるのが魅力。今回特集する、アジア映画通の方たちの魅力別新・旧作おすすめリストを参考に、週末は映画鑑賞を楽しんでみてはいかがでしょうか?
女優・渡辺真起子さん
TVや映画などで活躍。2022年1/21(金) 公開の映画『真夜中乙女戦争』に出演。そのほか、直近の活動はwww.decadeinc.com/ makiko-watanabe/でチェック。
葛藤と向き合う姿に共感します。
最初は80年代香港映画にはまり、中国、台湾も観るようになって、最近は東南アジアやインド、イランと……。旅する感覚で観るのも楽しいもの。韓国は監督で観ることが多いですがアジアでは、若い世代、女性監督も活躍していてとても気になります。それぞれ近代化と伝統のはざまでいろいろ葛藤している諸国、幸せとは何かという問いかけをたくさん見かける気がします。アジア映画の奥行きは広く豊か。
作家・茅野裕城子さん
女優、トラベル・ライターを経て、90年代に中国留学。95年『韓素音の月』ですばる文学賞を受賞。著書『西安の柘榴』『ミッドナイト・クライシス』(集英社)他、また、子供時代に遊んだバービーが忘れられず、バービー・クロニクル『バービーからはじまった』(新潮社)を出版。中国滞在が長く、北京や新疆の小説も。最近はシベリアへ。
知らない歴史や大いなる展開に圧倒。
最近は配信で観ることも多いのですが、中国映画や台湾映画はかなり観ます。毎年中国のお正月を訪ね映画をまとめ観るのも楽しみ。来年は行きたいですね。題材に飛躍があるアジア映画、惹か れますね。今や製作費も技術もどこもたいしたもの、展開に驚けるのも味わいのひとつ。またたとえば韓国の光州事件とか、中国の文革とか、あまり知らない 歴史的背景に触れられるのもアジア映画の魅力として重要。
アジア映画研究者・松岡 環さん
大学でヒンディー語を専攻、1976年からインド映画の紹介を始める。『インド映画完全ガイド』(世界文化社)等インド映画に関する著述のほか、『ムトゥ 踊るマハラジャ』『きっと、うまくいく』『パッドマン 5億人の女性を救った男』など、インド映画の字幕も多数担当。
娯楽に徹するパワーは絶大です。
アジア諸国の映画は、人々の娯楽として作られる面が強く、それに徹しているのが最大の魅力。抱えている社会問題も内容に取り込むため、訴えかける力が強いんです。長くフォローしているインド映画のほか、韓国からイランまでカバー。中国のインディペンデントやベトナム、インドネシアのアクションなども注目して います。よく「インド映画の入門法は?」と聞かれますがまずは一度観てみて下さい。
フォトグラファー・中川真人さん
雑誌、広告などファッションフォトの世界で長らく活躍。
ドラマを語れる俳優を観る安心感!
ぺ・ドゥナは「自然さ」において僕の中でトップな女優です。追っかけるうち、ソン・ ガンホの、本人はかっこいいのに典型的な韓国のおじさんになりきる姿に感心し次々作品を観て、ポン・ジ ュノ監督作品も遡ったり。『サニー』のシム・ウンギョンも素晴らしい。社会の矛盾に向き合ったり、覚悟を持って人間自体に迫るのは韓国映画の凄さ。インド映画もいろいろな世界観を見せてもらえて興味深いです。
編集部
80年代香港、韓国映画からアジアの同時代映画を観てきたスタッフが、新しめの映画からおすすめを、次回記事からご紹介します。
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◎世界中が注目の『シティポップ』。私の青春1970年~80年代のアルバム、ヘビーローテーションの7枚。
◎『グリース』を観て、ポニーテールにしたあの頃の映画音楽。
◎青春の’70~’80年代。私にトキメキをくれたPOPディーバたち。
『ku:nel』2020年9月号掲載
取材・文 原 千香子、青木純子