図書館員時代に片っ端から読んだ本の中で出合った私の「暮らしの先生」。校正者・牟田都子さん【成長するための読書案内】

成長するための読書案内 校正者・牟田都子さん

読書を通じて他者の多様な考えに触れて、人は大人になっても自分を見直し、変わっていくことができます。本がもたらす発見と喜び。読書好きな人に聞いたあなたを成長させた本とは。校正者・牟田都子さんに伺いました。

教えてくれた人

PROFILE

牟田都子/むた・さとこ
校正者

1977年東京生まれ。図書館員などを経て校正の仕事に。著書に『文にあたる』『校正・校閲11 の現場』。編著書『贈り物の本』も好評。最近は梨木香歩さんの著作を年代順に読んでいる。

暮らしの指針となる大切な先生たち。

図書館に就職した23歳でひとり暮らしを始めた牟田都子さん。自分なりの生活をゼロから作り上げる参考にと、職場の家政学の棚に並ぶ、料理やインテリアの本を片っ端から読んだそうです。

「その中で、こういう暮らしができるようになりたいと先生を見つけた思いだったのが石黒智子さんの『少ないもので贅沢に暮らす』でした。実用的で合理的、かつ見た目にも美しい生活の道具の選び方を語りながら、結局あなたはどう生きたいのかと問われているように感じました。年齢を重ねて生活も変われば、道具に求めることも変わり、石黒さんの著書の内容も変わります。出合って25年、読み続けてそれをずっと見せてもらえたのはありがたいことですね」

『少ないもので贅沢に暮らす』 石黒智子 著

20代の初めに読んだ
『少ないもので贅沢に暮らす』
石黒智子 著

自分に必要なものを見極めて長く使う。著者のシンプルで丁寧な暮らしとお気に入りの品々を紹介。「センスは20代になったら自分で鍛えるもの、という後書きの一節もしみました」。PHP文庫

有元葉子さんの著書に出合ったのも図書館員時代でしたが、「ほんとうに大事な先生」と思うようになったのは30代も半ばを過ぎた頃から。

「レシピが素晴らしいのはもちろんですが、『毎日すること。ときどきすること。』をはじめ彼女の生き方が率直に綴られたエッセイを繰り返し読むようになりました。調理用品のブランド『ラバーゼ』への取り組み方でもわかるように、目の前の仕事にその都度全力を注ぐ。力を出し切って結果は考えないという潔さに惹かれます。〝困難から逃げずに乗り越えてきた人とラクに生きてきた人とでは50代60代70代になったとき差が出る〟という意の一節にはぐうの音も出ない」

『毎日すること。ときどきすること。』 有元葉子 著

30代の半ばに読んだ
『毎日すること。ときどきすること。』
有元葉子 著

ものを3分の1に減らす。「使いにくい」を変える。ヨガや茶道など習い事に励む。責任をとって生きる。外出先での15分の過ごし方。日々続けていることとその理由まで綴られた書です。講談社

3冊目の幸田文さんの『雀の手帖』は20代から折に触れ読み返してきた1冊。

「身の回りのよしなしごとを書きつつ、そこから人生を考えさせる大きなテーマにつなげていく。日々の生活の中で、物事をよく見て、考えている姿勢が、この文章をうむのでしょう。若いころとは読み方も変わり、今ごろになって何を言っているのかわかったということも。これから先読み返すと、また違う景色が見えてくるかもしれないと、楽しみです」

『雀の手帖』 幸田文 著

20代の終わりに読んだ
『雀の手帖』
幸田 文 著

「丁寧という言葉を取り上げ”時間をかければ丁寧なのではなく、丁寧な心ざまで物事に向きあい、とぱすぱしないこと”と書いているのが印象的。校正の仕事で丁寧とは?と考えたりも」。新潮文庫

生活と仕事が地続きになった3冊。今も牟田さんの日々の指針となっています。

『クウネル』2026年11月号掲載
写真/久々江 満、取材・文/丸山貴未子、編集/船山直子

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『クウネル』NO.141掲載

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