日本のシンデレラ、桂昌院。神仏や地元への感謝を忘れない生き方も美しい【酒井順子さん女人京都Vol.3】
『女人京都』を読み女人ゆかりの地を行くと都の陰影も見えてくる。『女人京都』の著者であるエッセイスト・酒井順子さんに、歴史上の4人の女人にまつわる地を案内いただきました。
キャラクターではなく実在していた!内助の功で知られる「おかめ」は今なお夫婦円満のシンボル【酒井順子さん女人京都Vol.2】からの続きです。
教えてくれた人
酒井順子/さかい・じゅんこ
エッセイスト
東京生まれ。平安女性文学を通じて京都好きとなり、大学の講座を受けに長期滞在したことも。『都と京』ほか京都関連著作も多い。最新刊『ひのえうまに生まれて』。
『女人京都』酒井順子
歴史上の女人足跡を訪ね想像巡らす、雑誌連載をまとめた京都案内エッセイ。史跡巡りの合間になごみの栄養補給も。小学館文庫
桂昌院 ーー今宮神社
桂昌院
1627(寛永4)年生まれ。徳川3代将軍家光の側室で5代将軍綱吉の生母。信仰に厚く、護国寺建立を発願、奈良の東大寺や春日大社、京都・善峯寺など多くの寺社を支援。
上り詰めた女人の祈りに感じ入りお餅をほおばって、息災。
桂昌院は歴史に名を残す、日本のシンデレラ。西陣の八百屋の娘として生まれながら、公家の令嬢の側仕えとして大奥に入り、運命が一変。春日局に見出され、家光の側室となります。授かった子はのちの5代将軍綱吉です。
「何の後ろ盾もない完全アウェーの中、子どもができたことで女性の最高位まで駆け上がる。稀に見るシンデレラストーリーです」と酒井さん。桂昌院に思いを寄せて訪れるのが、縁深い今宮神社です。
春日造屋根が美しい若宮社。桂昌院の寄進で拝殿も造営され、綱吉の世継ぎ誕生への願いが伝わる。
頂点を極めつつ、生涯忘れなかったのが神仏への感謝。生まれ育った西陣にあって荒廃していた今宮神社の立て直しに尽力します。ゆかりある手水舎、お玉の井でお浄めし本殿に参拝したら、面影を辿って若宮社へ。子授けのご利益があり、復興への思いを傾けたと伝わります。
楼門そばの手水舎にある、お玉の井。桂昌院ゆかりの井戸で、西陣に暮らした頃の名前、お玉にちなんで名付けられた。地下から汲み上げられた水はひんやり冷たく、心洗われる。
「境内にある桂昌院のレリーフはきりっとした美人であり、さぞかしきれいだったのだろうと想像します。出世しても出自を隠さず、地元への感謝を忘れなかった生き方も、美しいですね。この辺りは住宅地ですが、境内は緑豊かで清々しい。静かなひとときが過ごせます」
今宮神社本社。健康長寿や良縁開運を願って参拝が絶えない。左手には疫神が鎮まる疫社が。
門前名物のあぶり餅も、お参りの楽しみ。二軒が向かい合い、この日は『かざりや』へ。店先にて炭火で餅があぶられ、「お焦げがおいしい」と酒井さん。創業は1600年頃だそう。桂昌院が生きた時代と重ね、自ずと想像がふくらみます。
無病息災や厄除けを願い参拝者がこぞっていただく、あぶり餅。東門を出てすぐ、風情ある佇まいも魅力。
きなこをまぶして焼いた小ぶりな餅に白味噌だれをまとわせた、あぶり餅。1人分600円。
今宮神社
平安京建都以前より疫病を鎮める社があったとされ、994年一条天皇の御代に創祀。やすらい祭や今宮祭も名高い。
住 : 京都市北区紫野今宮町21
授与所 : 9:00~17:00
境内参拝自由
http://www.imamiyajinja.org/
あぶり餅 本家 根元 かざりや
江戸初期創業の門前茶屋。丹後の餅米、京都産大豆を炒ったきなこなど確かな素材を使い、愛される味を継承。
住 : 今宮神社東門前
営 : 10:00~17:00(L.O.)
休 : 水曜(1 日・15日・祝日が水曜の場合は翌日休) 12/16~31休
\ほかに立ち寄るなら/
歴史を堪能した後は、新大宮商店街へ。京都人のソウルフード『中華のサカイ』の〝冷めん〟で、日常へ戻りましょうか。
中華のサカイ 本店
住 : 京都市北区紫野上門前町
92https://www.reimen.jp/
酒井さんも愛してやまない名物の冷めんは「ヤミツキになる、ここだけの味」
MAP
『クウネル』2026年9月号掲載
写真/大段万智子、イラスト/友野可奈子、取材・文/宮下亜紀
SHARE
『クウネル』NO.140掲載
旅を深める本76冊と歩く、京都。
- 発売日 : 2026年7月17日
- 価格 : 1,080円 (税込)