スウェットシャツの中央をハサミでばさり…『agnès b.』愛され名品誕生の秘密。祝50周年ブランドヒストリー

アニエスべー50年

パリに1号店を構えてから半世紀。『アニエスベー』は、いつの時代も変わらず私たちの“好き”のそばに。ブランドの歩み、永く愛される名品のストーリーをたどります。

パリ 1号店のオープン

アニエスべー50年

かつてパリ中央市場があったレ・アール地区の元精肉店を改装し、1号店を1976年にオープン。ショップの外観。

1976年、パリ6区のレ・アール地区に、 最初のショップが誕生(ブランド設立は1975年)。元精肉店を全面改装した1号店は、オフィスやアトリエとしてだけではなく、人々が集う表現の場でもありました。壁にはグラフィティやポスターが貼られ、放し飼いの鳥が自由に飛び回り、音楽が流れる。訪れる人たちは会話を楽しみながら自由な時間を過ごしていました。日常の中にある創造の自由、そして自分らしさを楽しむ空気がそこには流れていました。

染め直してハンガーに干された洋服が並ぶ店内。

アニエスべー50年

アニエスさん。その後、自動車メーカーの古い修理工場や食料品店などの歴史ある建物を活かしながら店舗づくりを展開。

設立者であり、デザイナーのアニエス・トゥルブレは、繊細でありながらシックでカジュアルなスタイルを一貫して提案。〝心境を表現する服〟としてパリジャンたちに受け入れられ、そのエスプリは、今もなお、時代やジャンルを越えて、多くのファッショニスタを魅了し続けています。

世界観をトータルで

アニエスベー』の服づくりは、特定の人のためではなく、世代や性別を越えて広がっていきました。メンズライン「オム」とキッズライン「アンファン」は、いずれも1981年にショップをオープンしました。

「オム」は、フレンチシックをベースにしたシンプルで機能的なスタイルを提案。子どもたちに向けた「アンファン」は、ブランドの世界観や上質さをそのまま楽しみながら、動きやすさや快適さにも配慮されています。さらに少女たちに向けた「ロリータ」「ギャルソン」も展開。手頃な価格で、若者にもファッションを楽しんでほしいという想いが込められました。

アニエスべー50年

カーディガンプレッション〉とプリーツスカートに、メンズジャケットやハットを合わせて。

どのラインにも、「自分らしく生きるための服」という信念が息づき、装いを通して〝心の自由〟を伝える精神が受け継がれています。

長く愛される2つのアイコン

アニエスべー50年

カーディガンプレッション〉はカラーバリエーションに加え、 丈やシルエットの変化、黒革などのレザー素材の登場によって、 多彩なスタイルへと広がっていった。

アニエスべー50年

カーディガンプレッション〉の原点となった白のスウェットシャツ。

着丈もさまざまに展開。

アニエスべー50年

誕生から45年以上経った今もなお、着る人の個性を引き立てながら進化を続ける。

1979年、アニエスは、毎日のように着ていた白いスウェットシャツの中央を、もっと動きやすくと、ハサミで切り開きました。こうして生まれたのが、不朽の名品〈カーディガンプレッション〉です。〝カーディガン〟と〝プレッション〟(スナップボタン)を掛け合わせ、そう名づけられました。

アニエスべー50年

12mmの細ボーダーと60mmの太ボーダーを展開。 線の太さや色の組み合わせにより、異なる表情を楽しめる。

そしてもうひとつ、ブランドを象徴するのがボーダーTシャツ。1966年に映画『ポリー・マグーお前は誰だ?』の衣装を手がけたアニエスは、海辺の労働服やラグビーシャツに着想を得て、動きやすいボーダーTシャツを作りました。その11年後、バリエーションを増やして販売が実現。

この2アイテムの存在は、流行に左右されず、長く使えるタイムレスなものをつくり続けるというブランドの哲学を象徴しています。

アートカルチャーを広めて

ブランド設立当初から、アートやカルチャーを発信し続けてきた『アニエスベー』。ブティックの壁に映画ポスターを飾り、店内で写真やコンテンポラリーアートを展示するなど、ファッションを通して若いアーティストたちの表現活動を支えてきました。

アニエスベーとカサベテスのTシャツ

ジョン・カサヴェテス監督との出会いで、映画への情熱を深めたアニエス。彼の作品のポスターとともに。

なかでも、アニエス・トゥルブレが深く心を寄せてきたのが映画。ヌーヴェルヴァーグ作品に影響を受け、若い監督や俳優を支援。さらに自ら映画を製作するなど、その情熱こそが創作の原点となったようです。

アニエスべー50年

パリ13区にある『ラ・ファブ』は、『アニエスベー』が手がけるアートの発信拠点。

アニエスべー50年

自身のコレクションをはじめ、多様な作家の作品を展示し、文化交流の場として親しまれている。

そうした文化へのまなざしは今も変わらず、2020年にパリにオープンさせた複合施設『ラ・ファブ』へと受け継がれています。ギャラリーと書店を併設したこの場所で、アートと社会、そして次の世代をつなぐ活動を、真摯な情熱とともに続けています。

agnès b.

取材・文/阿部里歩

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