脅威のウィルスの出現で、世界中の人々の暮らしが一変した2020年。パリももちろん例外ではなく、いまだかつてない雰囲気に包まれたようです。在パリ5年目〈クウネル・サロン〉プレミアムメンバーの松永加奈さんが一年を振り返ります。
2020年がもうすぐ終わります。世界中が予想外の出来事に翻弄されたこの一年。何か起きてもあまり揺るがないパリの街と人々も、今年はさまざまな変化が見られたように思います。
フランスの2020年の幕開けは、前月(2019年12月)から行われていた大規模なストライキを持ち越したままスタートしました。メトロや国鉄、バスなどが一部を除いて全面ストップ。おかげで車は大渋滞、信じられるのは自分の足(つまり徒歩)だけ。そんな状態が緩和し始めた頃、新型コロナウイルスの影響で観光客が激減。ハグやビズの習慣は自粛、楽天的なフランス人でさえ不安を口にするようになり、3月のファッションウィークが終わるとほどなくして、ロックダウンに入りました。
街から人と車が消え、幾何学模様の如く空に描かれていた飛行機雲も消えて、しんと静まり返っていた春のパリ。空を見上げては、世の中から取り残されているような気持ちで過ごしていました。そして5月半ばにロックダウンが解除され、未知なる敵を相手に最初はみんな手探りで日常を取り戻そうとしていました…が、ガマンの日々の鬱憤が一気に爆発!拡張されたテラス席に繰り出し、芝生でピクニックを謳歌し、バカンスにも全力投球。「やっぱりフランス人はフランス人なんだなあ」と実感しました。
一方、国外からの観光客はほぼいない状態。ホテルは営業を再開しましたが、市内観光バスやセーヌ川の遊覧船の運航は少しだけ。わずかに開くスーベニールショップは閑散として、本来なら混み合う人気のフォトスポットは写真撮り放題。夏という一年で一番華やかな季節に、外国人ツーリストがいない…不思議な気持ちになったことをよく憶えています。
人々が満足のバカンスを終え、新学期が始まった9月。継続する規制にマスクが義務化され、公共交通機関を使わない自転車ユーザーと専用道路が急増しました。ただ、バカンスで気が緩んだのか、ソーシャルディスタンスも消毒も徐々に忘れられ、再びのウイルス感染拡大。季節が冬に向かう中、レストランも美術館もデパートも、お楽しみは全部クローズして、またまたロックダウンに…。現在は緩和されて、人々はクリスマスから年末へのバカンスモード、街の中は至る所で、工事や整備が行われています。ロックダウンで作業が止まっていた影響なのですが「これは来春あたりに観光客をお迎えするための準備」と見えなくもないので、大きな音も通りにくい道も「よしよし」と思うことにしました。
新しい年はもうすぐ。来年はたくさんの人が訪れる、賑やかなパリに戻りますように。そして日本もフランスも、世界中が活気に溢れた年になりますように。みなさま、Bon fin d’année !