お目当ては美食と美酒。創業200余年の老舗酒造が手がけるレストランを訪ねて、春の遠足気分で茨城へ!

春の陽気を感じられるようになり、お出かけ意欲が高まる季節になりました。"美味しいもの"をお目当てに、友達を誘っていつもよりちょっと遠くへ出かけてみるのも楽しそう!

そこでマチュア世代にぜひおすすめしたいレストランをご紹介。茨城県那珂市にニューオープンした「母屋(おもや)」は、創業200余年の老舗酒蔵『木内酒造』が手がける、こだわりの料理、空間、そしてお酒を堪能できる完全予約制のレストランです。

1823年創業『木内酒造』の新業態レストラン

茨城県那珂市にある『木内酒造 本店』。敷地内には、大正蔵をリノベーションした蕎麦店や利き酒処、ビール工房が備わります。

江戸末期1823年に現在の茨城県那珂市の地で創業し清酒〈菊盛〉にはじまり、1996年よりクラフトビール、2016年よりウイスキーも製造している『木内酒造』。

常陸野ネストビール〉は日本のクラフトビールとして海外でも絶大な人気を誇り、〈日の丸ウイスキー〉は先日イギリスで開催された「ワールド・ウイスキー・アワード 2025」にて、 4商品が部門最高賞・金賞・銀賞を受賞!日本の酒文化を海外に広めています。

常陸野ネストビール〉は缶で4種類、ボトルで12種類+シーズナルと、豊富なラインアップ。

石岡市の八郷蒸溜所でつくられている〈日の丸ウイスキー〉。

酒造りにとどまらず食と酒を楽しむ場として蕎麦屋、とんかつ店、ビアレストランといった飲食事業も展開。そんな『木内酒造』が新たに手がけたのが、革新的なフレンチを提供するレストラン「母屋」です。

酒蔵がフレンチ?と不思議に思うかもしれませんが、酒蔵だからこその技術が存分に生かされた料理となっています。

昭和初期に建築された貴重な"母屋"が生まれ変わって

気になる料理は......とその前に、マチュア世代にこのレストランをおすすめしたい理由のひとつでもある、古民家の趣たっぷりな食事処についてご紹介したいと思います。「母屋」という名前の通り、木内家が代々暮らしてきた母屋をリノベーションして食を愉しむ空間として生まれ変わったのがこちらのレストラン。

昭和初期に建てられた『木内酒造』の母屋をリノベーション。改装プロジェクトには一年半もの歳月をかけたそう。

昭和初期に建てられた商家建築の木内家の母屋。普請道楽だったという当時の主人の趣味もあり、多種多様な木を飾りに用いるなど随所に趣を感じられます。

建築当時からの建具や欄間、天井などに洗いをかけ元の良さを引き出す形で改装。

藤田東湖により揮毫された「飲中八仙歌」。「飲中八仙歌」は中国の詩人・杜甫(とほ/李白と並び称される唐代の代表的詩人)が、唐の時代の名だたる酒客8人をユーモラスに描いた詩。

家屋の歴史の分だけ家具や装飾品などの歴史も深く、1階の襖には幕末の思想家・藤田東湖が書き下ろしたという「飲中八仙歌」を見ることができます(のちに火災で消失し、東湖の甥・丹誠によって復刻されたそう)。

上部に飾られているのが黄門さまより御拝したと伝わる扇。

ほかにも、水戸藩主であった黄門さまより御拝したと伝わっている扇、茨城ゆかりの作家の書画なども。レストランでありながらギャラリーのような、とても貴重な空間で食事をすることができるのです。

食事をいただきながら臨める庭園では、四季折々の草花が楽しめます。

なんだか格式が高そうに感じられるかもしれませんが、ほっと落ち着く空気感(ここが生活の場となっていた”母屋”だからかもしれませんね)で、座席もゆったりと配置されているので、会話を楽しみながらリラックスして過ごすことができます。

母屋」のエントランス。奥に飾られている書画は、開業に合わせて新たに制作された、美術家・遠山由美氏による「飲中八仙歌」。

2階でも食事が楽しめます。古民家らしい急こう配の階段。

酒蔵が挑んだのは「発酵×常陸野食材×フレンチ」

では、こだわりの料理をご紹介!ポイントは「醸造の発酵技術」が一皿一皿に用いられているということ。常陸野の大地で育まれた旬の野菜、県産の銘柄豚や銘柄牛、地元漁港から仕入れた魚介。これらのこだわり素材を酒蔵ならではの手法でフランス料理に昇華しています。美味しいものをたくさん知るマチュア世代にも、新感覚をもたらしてくれるはずです。

いただいたのは、前菜からデザートまで6皿+自家製パンという構成のランチコース(5,500円)。どの料理も丁寧につくられているのがわかる上品な味わいで、見た目にもとても美しい。

バカリャウはポルトガル語で塩漬けの干し鱈のこと。ドライトマトも自家製。

こちらはアミューズの「自家製バカリャウと里芋のコロッケ」「自家製ドライトマトのタルト」です。コロッケは、酒蔵の軒先に飾られている杉玉をイメージしています。

鰆の下には「常陸秋そばの実と発酵菊芋のリゾット」が。菊芋のカリッとした食感がアクセントに。

魚料理は「那珂湊産 鰆の粕漬け」。前日獲れた新鮮な鰆を純米酒の酒粕で漬けたそう。日本酒のつくり方の一つという「山廃(やまはい)」でつくったブランソースと合わせていただきます。鰆はしっとりほろりとほぐれ、粕漬けのほのかな甘みを感じられます。

添えられているソースは、『木内酒造』の〈朝紫〉というお酒と合わせて作られたビーツのソース。

藁焼き直後の様子を見せていただきました。藁は酒米を収穫した際の稲わらを使用しているそう。

肉料理には、〈日の丸ウイスキー〉の製造過程で出る麦芽粕を飼料に育てられた「常陸野ポーク」が登場!藁焼きで一気に焼き上げられた豚肉は、表面は脂がカリッと、中はお肉がやわらかジューシーに仕上がっています。藁焼き特有のスモーキーな香りと豚の甘みが絶妙です。

冷菜の「大洗産平目昆布締め」。平目は一度脱水したのち、日本酒と昆布で締めているとのこと。黄色の柚子胡椒ソースは木内社長のお手製!

「17カ月熟成自家製プロシュートご飯」。自社運営しているハム工房からのプロシュート。昆布だしをかけていただきます。

デザートの「土浦蓮根のアイスと金砂郷産白インゲン豆のブランマンジェ」。茨城県の郷土料理「小倉蓮根」をイメージして作られたそう。砂糖を使用していないとのことですが、麹とでんぷんを発酵させた自然な甘味が美味しい!

ランチもディナーも日本酒ペアリングをお供に

そして、ここは酒蔵。お酒好きな方は、やはり日本酒ペアリングはマストです。木内社長と和酒製造部ゼネラルマネージャーの中村幸代さんが料理に合わせた最高の組み合わせをセレクトしているので、その相性はお墨付き!

乾杯にはピンク色が華やかなスパークリング酒〈淡雫HOPS〉。甘酸っぱい柑橘系の香りが広がります。

冷酒やぬる燗、スパークリングなど5種類の日本酒が提供され、どれもなかなかの量。これでペアリング料金3,000円というのはとてもお安い。『木内酒造』の"粋"を感じる内容と価格です。

デザートのために作られたお酒〈心の花 Sweet All〉。

ちなみに、ランチとディナーどちらにも提供されるデザートとのペアリング〈心の花 Sweet All〉は、このデザートのために作られた、ここでしか味わえないお酒。古酒を2種類ブレンドして作られているそうで、「デザートのペアリングは難しかった。やっとできました!」と中村幸代さんは、その出来に満足した表情を見せるのでした。

美味しい食事とお酒を求める大人の遠足へ

母屋」のある『木内酒造 本店』までは、東京駅から特急利用(+乗り換え1回)で約2時間。最寄駅の常陸鴻巣駅より徒歩5分です。常磐自動車道を利用して車も便利です(ただ、運転手が下戸であるもしくはお酒を我慢......ということになるので要相談ですね)。

春の気候の中、中庭に出てゆっくり過ごしたり、おしゃべりしたり。心地よい時間が流れています。

木内酒造 本店』の敷地内には、きき酒処や木内酒造の商品が勢揃いするショップも併設されているので、合わせて訪れてみるのもおすすめです。

普段よりもちょっと遠出をして、歴史ある空間で美味しい食事とお酒。いつも以上に会話の弾むひとときになりそうです。

母屋

公式サイト
住所:茨城県那珂市鴻巣1257
電話:029-298-2550(完全予約制)
営業時間:
12:00 一斉スタート(11:30入店可)
18:00 一斉スタート(17:30入店可)
※お揃い次第一斉スタート。15~30分ほどお時間に余裕を持ってご来店ください。

定休日:火曜、水曜

木内酒造

取材・文/上野郁

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