韓国コスメ伝道師に勧められて色々コツコツ使っていたら5年も衰えナシだった【これからのメロウライフ】
エディターの山村光春さんと、エッセイストの広瀬裕子さんによる往復連載。
「60代以降に使われる『シニア』という呼び方がどうもしっくりこない」という2人が、「私たちらしい人生の後半戦」について模索します。シニアでもなく、シルバーでもなく……。だったら「メロウライフ」なんていかがでしょう?
今回は「スキンケア」がテーマ。愛用の韓国スキンケアコスメを教えてくれました。
目 次
他人からしたら「怪しい」と思える誘いがある日届いた
僕のスキンケアへの目覚めは、見知らぬ人から届いたあるメッセージからはじまった。
「肌診断をさせてもらえませんか?」
その人(仮にRさんとする)は韓国コスメマニアで、美容師をしながら、そのよさを男子たちに広めるべく個人活動をしていた。うろ覚えなのだけど、何かのきっかけですでにインスタではつながっていた。ただ、一度も会ったことはなかった。
だから「なぜ僕に?」とは思ったけれど「何か売りつけられるんじゃないか」などという疑心は不思議とよぎらず「肌診断なんてやったことないし、面白そう。ぜひ!」と、邪気なく返信したところ、重い荷物を両手に抱えて、わざわざ家までやって来てくれた。今から4〜5年前のことだ。
スキンケアなんて無頓着だった僕が
その頃まで僕は、世の多くの男性たちと同じく、スキンケアの知識をほぼ持ち合わせていなかった。顔には何かしら塗りたくっていたけれど、だいたい姉にすすめてもらった馬油か、お手軽なオールインワイン的なクリームか。
そういえば、取材で“美容界の大御所”と呼ばれる方の取材をした時。後の雑談で「化粧水のあと、顔がベシャベシャのままで乳液を塗っちゃだめなんですか?」というトンチンカンな質問をし、相手をドン引きさせたことがあった(でも実は、いまだにこの疑問はぬぐえていない)。
さて。Rさんが持ってきてくれた荷物の中身は、大量の韓国コスメのサンプルだった。机にずらりとそれらを並べ、どういうブランドで何が特徴か……の前に、そもそもこれらが何なのか、どういう役目を果たすのかを、懇切丁寧に教えてくれた。基本は、保湿→栄養→ふたの3ステップ。すべてはそのバリエーションであること。ちなみに「ブースター」という言葉は、この時初めて知った。
たぶん一生使い続けるセラムとの出合い
そして実践。まずは洗顔。勝手に発泡する洗顔料で顔じゅうがみるみる泡だらけになり、ひとしきりワハハ!と盛り上がったあと、顔を触ってかんたんな肌診断。「普通肌です」と言われ、なぜかプチがっかり。
その後「えーっと、まずはこれかあれ、その次はこっちかこっちで、そっち選ぶならこっちで」と、チェスのようにボトルをトントンと並べ、いろんなパターンを提示しながら、つど順序を教えてくれる。明快で小気味よく、潔い。説明がいちいち、それこそ良質な化粧水のようにスーッと馴染んでいく(知らんくせに)。
韓国コスメ使いの極意
覚えていることがある。彼曰く、好きなブランドが見つかれば、それで統一させる「ライン使い」をしちゃいがちだけど、韓国コスメの場合はそれはやらなくてもいい、と。各ブランドが価格でしのぎを削る中、採算度外視でいい成分をたっぷり含んだ、いわゆる「コスパ最強シグネチャーアイテム」が必ずあるはずだから、それをいかにめざとく見つけ、組み合わせていくかが、成功のカギだという。
なんじゃそりゃ面白いじゃないか。こりゃもうハマるしかないじゃないか。と、僕の心は小躍りした。
そんなこんなをひとしきり聞いて、ご丁寧にも通販サイト『Qoo10』での買い方まで教えてくれて(メガ割を狙え、が合言葉)、最後に小さなサンプルをたくさん置いて、「じゃ!」と言ってRさんは、さわやかに去っていった。怪しくも、商売でもなんでもなく、ただ単に「韓国コスメを男子に広めたいと思っているいい人」だったのだ。
使って5年、「全然変わってない」って実はすごいこと!
それから僕は54歳になり、肌にどういう変化がもたらされたかというと、実はそれほど変わっていない気がする。あれからスイッチが入って、韓国コスメを探求する、ということもしていない。
ただ、ちゃんといまだにRさんの言いつけを守り、基本的には同じものを、同じ順番で、ずっと使い続けている。これも世の多くの男性たちと同じく、ひとつのことを頓着なく、ただやり続けることは得意なのかもしれない。
ただ、ふっと思い、はっとする。この「変わっていない」ことこそが、実はめちゃくちゃ「変わっていること」なのではないだろうか、と。
年月が重なるにつれ、否応なしに、すべては老化していく。体も、目も、歯も、すべてがじわじわと衰えていく。それなのに、肌はそんなに意識しないということは、日々のコツコツが「効いている」ことに他ならない。ありがとうRさん!と、心の中でむせび叫ぶのだった。
男性にとってスキンケアとは、さしずめエチケットのようなもの。歯を磨いたり、爪を切ったりすることと同じく、さしてテンションは上がらないけれど、日常生活に組み込んでしまえば、とりたてて苦にもならない。最低限の清潔感も保たれる。
そして、いつか。つみたてNISAのように「やり続けてて、よかった〜」となるのかもしれない。
~アフターメロートーク~
わたしより詳しいです。どうしてか、劣等感。韓国コスメは、スルーしていたのですが、よさそうです。
たぶん、もともとコスメに対する偏差値が低く、ブランドの違いとかよくわかってないから、素直に取り入れられたんだと思います。
ある年齢になると、スキンケアラインのデザインカラーが、ピンク、パープル、レッドになり、使いたいけれど、取り入れることを躊躇します。そこから素直にならないと。
デザインカラーこそマーケティングと直結してそう。「こういう色が好きでしょ?」という誘導。でも、好きになれないこともありますよね。