【私の東京の味】平松洋子さんが選ぶ、ひとり楽しむ東京の昼ごはん4軒(後編)

春爛漫、ひとりふらりと思いつくままに散歩をしたり、気になった美術展を訪れたり、そんなことが心楽しい季節になりました。食に関する著作も多い平松洋子さんが「東京の味」として選んでくれたのは、そんな季節に訪れたいお昼ごはんがおいしい4つのお店です。後編は住宅街にたたずむスリランカ料理のお店と、知る人ぞ知る名食堂をご紹介します。

信濃町駅にほど近く、住宅街の中にひっそりたたずむスリランカ料理店の『バンダラランカ』は広々とした空間、洗練された味とサービスが行き届いたレストラン。インド料理とはひと味違うスパイスや素材使いで、料理を通して彼の地の空気を感じられるのも、こうした料理店ならではの楽しみといえそうです。

新しいところで注目したいのは、修復・改修された旧・九段会館ある『九段食堂』です。

「九段というロケーションもいいし、日本各地の信頼できる食材を丁寧に料理している誠実さにも好感が持てます。見ず知らずの人が肩を並べてごはんを食べるという、食堂が本来持っている公共性、平等性を感じられる大事な場所です」

街の魅力はそこにあるお店と人が作るもの。日本各地からだけでなく、世界からも多くの人々が集まる東京には多種多様な歴史や文化、大切にしてきた味があるのです。ゆったりしたひとりごはんを楽しみながらその一端を体験する……豊かな時間が持てそうです。

『バンダラランカ』ヘルシーなスリランカ料理をゆったりした美空間で。

コロニアルスタイルのリゾートをイメージした伸びやかな空間だ。

JR信濃町駅と地下鉄四谷三丁目駅の中間くらい、静かな住宅街のただなかにある意外なロケーション。「ゆったりと過ごせる空間と行き届いたサービスは大人の女性のランチの場所として、おすすめしたいです」と平松さんが教えてくれたスリランカ料理のレストランです。

ランチは写真のプレートランチが中心メニュー。〈鶏肉やレンズ豆のカレー〉、〈ビーツのココナッツミルク煮〉などのおかずの下には赤米とイエローライスの2種類のご飯が。野菜をたくさん摂り、油脂をそれほど多く使わないスリランカ料理は身体にもいい、と来日20年のオーナーのバンダラさん。これからの季節、テラス席でのお昼も気持ちが良さそうです。

ボリュームたっぷりのランチは2,300円、デザート、紅茶つき。

住宅街の中にひっそりと。2階にはアートギャラリーもある特徴的な外観が目印。

バンダラランカ

住:新宿区大京町12-9 アートコンプレックスセンター1F
営:11:00~14:30(14:00L.O.) 17:00~21:30(21:00L.O.)
休:月、第2・第4火
予:予約可
バンダラランカ公式HP

『九段食堂』一般客にも開かれた社員食堂。ロケーションも素晴らしい。

定食や丼は日替わり。この日は日南どりの粒マスタード焼きを。一般1,470円

1934年の創建当時の建築を復元した九段会館の堂々たる玄関。

国の登録有形文化財である旧九段会館の一部を残した保存棟とオフィスフロアを備えた新築棟からなる『九段会館テラス』。その地下一階にある『九段食堂』は、オフィスで働く人たちの社員食堂。平日の昼間だけオープンし、カフェテリア方式で定食やサラダ、丼ものを提供しています。オフィスワーカーにまじって一般客も利用可能。地域に開かれた場所を、というお店の心意気を感じます。

「九段や北の丸公園のあたりは絶好の散歩スポット。竹橋の東京国立近代美術館も近くて、そんな散歩でお腹がすいたときのランチにぴったりです。お堀を望むロケーションが気持ちよく、セルフサービスで提供される定食も誠実な味です」

九段食堂

住:千代田区九段南1-6-5
営:11:00~14:00
休:土、日、祝
予:不可
九段会館テラス公式HP

PROFILE

平松洋子/ひらまつ・ようこ

1958年、岡山県倉敷市出身。『野蛮な読書』で講談社エッセイ賞、『父のビスコ』で読売文学賞を受賞。近著に『酔いどれ卵とワイン』(文春文庫)。©渡邉茂樹

『クウネル』2024年 5月号掲載 写真/新居明子、取材・文/船山直子

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『クウネル』No.126掲載

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