【おすすめ映画】いま観ておいて!ベルギー注目監督のフレッシュな作品/Bunkamura ル・シネマ 渋谷宮下
ベルリン、カンヌなど世界の映画祭で近年注目を浴びているバス・ドゥヴォス監督の作品『Here』がいま『Bunkamura ル・シネマ 渋谷宮下』で公開されていて、世代を超え人気を集めています。
ちなみに渋谷のBunkamuraが隣接地の開発のためということで長期休館となり、ル・シネマも一旦閉じられたため、好きな映画館が消えたと嘆いている人がまだいるかもしれませんが、2023年6月より宮益坂下の渋谷東映プラザに復活していますのでご安心を。
バス・ドゥヴォス監督の『Here』
1983年生まれの監督の第4作であるこの作品は、2023年 第73回ベルリン国際映画祭エンカウンターズ部門最優秀作品賞と国際映画批評家連盟賞(FIPRESCI賞)をダブル受賞したことでも、注目を浴びています。
ベルギー・ブリュッセルの建設現場で働くルーマニア人シュテファンは、休暇をむかえ故郷に帰ろうとしていて……。冷蔵庫に残っていた野菜で得意のスープを作り、友人たちや姉に届けて帰省を伝える数日を過ごします。
旅立つ準備を整え車を取りに行く途中の森で出会ったのは、苔類研究のフィールドワーク中の、中国系植物研究者シュシュ。顔見知り程度だった2人は、一緒に苔を採集しながら心を通わせていく……。
何かが起こるというわけではなく、日常の断片をゆっくり、暖かな視線で見つめて描き出します。この世界にはやさしさやきらめく何かが本当は飛び交ってる、と静かに語っているようで、気持ち安らかになれる作品。
上映時間83分という長さも絶妙、見ごたえと軽やかさが両立しています。
Information
『Here』
2023年作品 ※『Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下』ほか全国ロードショー中
Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下 HP
1作観て元気になったら、2本目も!? 『ゴースト・トロピック』
『Bunkamura ル・シネマ 渋谷宮下』で同時公開されているバス・ドゥヴォス監督の1作前の作品『ゴースト・トロピック』をはしごしてしまうのも、大いに「あり」です。もちろん別の日でもいいけれど、なんとこちらも84分。
仕事帰りの電車で寝過ごしてしまって最終電車を逃した掃除婦が、ブリュッセルの街を歩いて帰る、その一夜が描かれます。イスラム圏、おそらく北アフリカからの移民で、独立した息子と高校生の娘がいるという主人公がさまよう街は、しっとり凍てついており……。
『ゴースト・トロピック』は夜の都会で主人公がどんな人やシーンと出会うか静かにチェイスするスタンスのカメラがメインで、そこに少し示唆的な映像も入り『Here』とまた一味違いますが、ともに登場人物の人生や日々にいつのまにか共鳴できる作品です。
詳しく描かれなくても、2つの映画で私たちは移民たちの日常を推察することになります。
舞台、背景である多文化が共生する都市、ブリュッセルにも興味惹かれて。映像ではたぶんほとんど見たことがない!
Information
『ゴースト・トロピック』
2019年作品 ※『Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下』ほか全国ロードショー中
Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下 HP
「ドゥ マゴ パリ プチカフェ」のホットカクテルをおともに
シアター併設の「ドゥ マゴ パリ プチカフェ」では、監督の出身国であり映画の舞台であるベルギーにちなんだシーズナルドリンクを展開中です。
ホットチョコレートをラム酒とともに温めて、ホイップクリームをプラス、トッピングのカカオニブをアクセントに。しっかり甘くて飲み終わりはすっきりしています。
ベルギー映画にオプションで大人のドリンク! ゆったり温かな時間を楽しんでください。
取材・文 原 千香子