銅版画家・山本容子さんの運命の一冊。俳句で開いた新しい自分と絵の変化
ふとしたきっかけで読んだ本が、その後の生き方に大きな影響を与えたり、転機になったり......。山本容子さんが俳句を通して出会った運命の本と、その魅力について教えてもらいました。
PROFILE
山本容子
書籍の装丁や挿画のほか、絵画に音楽や詩を融合させるコラボレーションにも取り組む。料理、タンゴ、ゴルフと習い事にも次々と挑戦。
俳句で開いた新しい扉。変化を楽しみに
還暦を機に俳句の世界に足を踏み入れた山本容子さん。以来、手元にあったものの、あまり開く機会がなかった『カラー版新日本大歳時記』が必携の書となりました。
「歳時記というのは、行事や天候、植物......いろいろな項目で季節を教えてくれます。自分の周りにある環境を知らない言葉で言い表してくれる、これぞ歳時記の醍醐味です。読めない漢字もあれば、知らない言葉がいっぱいあるのも当たり前。そうした膨大な言葉から自分にそぐう漢字を選び取ったり、知らなかった表現に出くわしたりすることで少し風景が変わる。学校の勉強じゃないわけだから、自分中心というのがいいでしょ」
俳句という新しい風が吹き込んだことで、山本さん自身にも変化が。
「俳句って、何に気づくかだと思うんです。たとえば、うちの庭にも小さいながらに四季がある。俳句を始める前は、そんなふうには感じませんでした。絵描きなのにね。でも雑草が増えたり、来る鳥が変わったり。少しの変化に気づくことで、自然やものに対する見方も変わってきたと思います。小さな庭からも、たくさん俳句が生まれました」
日常の気づきは俳句に、そして句作は仕事にも影響を及ぼしていると言います。始めて10年、「山猫」なる俳号でつくった句は600句ほど。
「四季の美しさや時を重ねることの喜びを、先達たちはなんと豊かに表現していることか。歳時記や季語辞典はぱらぱらとページをめくっているだけでもなるほどと思い、そのときどきにどんな言葉が目に留まり、自分に飛び込んでくるのかもおもしろい。俳句を知る以前の自分とは明らかに違っているし、絵だって変わっているはずです。これからも楽しみね」
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『ku:nel』2023年1月号掲載
写真/目黒智子、取材・文/河合映江、編集/黒澤弥生
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『クウネル』No.118掲載
私の人生を変えた本
- 発売日 : 2022年11月18日
- 価格 : 980円(税込) (税込)