銅版画家・山本容子さんの運命の一冊。俳句で開いた新しい自分と絵の変化

ふとしたきっかけで読んだ本が、その後の生き方に大きな影響を与えたり、転機になったり......。山本容子さんが俳句を通して出会った運命の本と、その魅力について教えてもらいました。

PROFILE

山本容子

書籍の装丁や挿画のほか、絵画に音楽や詩を融合させるコラボレーションにも取り組む。料理、タンゴ、ゴルフと習い事にも次々と挑戦。

俳句で開いた新しい扉。変化を楽しみに

還暦を機に俳句の世界に足を踏み入れた山本容子さん。以来、手元にあったものの、あまり開く機会がなかった『カラー版新日本大歳時記』が必携の書となりました。

「歳時記というのは、行事や天候、植物......いろいろな項目で季節を教えてくれます。自分の周りにある環境を知らない言葉で言い表してくれる、これぞ歳時記の醍醐味です。読めない漢字もあれば、知らない言葉がいっぱいあるのも当たり前。そうした膨大な言葉から自分にそぐう漢字を選び取ったり、知らなかった表現に出くわしたりすることで少し風景が変わる。学校の勉強じゃないわけだから、自分中心というのがいいでしょ」

『カラー版 新日本大歳時記』監修/飯田龍太 他

豊富な写真や絵画による解説が魅力。「瞬間を捉えた芸術家の眼に興味をそそられます」

山本さんは初版の全5巻を所有。現在は一冊に再編成された愛蔵版(1万6,000円)が購入可。(講談社)

俳句という新しい風が吹き込んだことで、山本さん自身にも変化が。

「俳句って、何に気づくかだと思うんです。たとえば、うちの庭にも小さいながらに四季がある。俳句を始める前は、そんなふうには感じませんでした。絵描きなのにね。でも雑草が増えたり、来る鳥が変わったり。少しの変化に気づくことで、自然やものに対する見方も変わってきたと思います。小さな庭からも、たくさん俳句が生まれました」

『季語・歳時記 巡礼全書』坂崎重盛

稀代の「歳時記」本蒐集家による季語の世界を味わい尽くす軽妙なエッセイ集。「歳時記を読み解くための格好の手引書。最近はこれが手放せません」と山本さんも絶賛。2,750円(山川出版社)

日常の気づきは俳句に、そして句作は仕事にも影響を及ぼしていると言います。始めて10年、「山猫」なる俳号でつくった句は600句ほど。

「四季の美しさや時を重ねることの喜びを、先達たちはなんと豊かに表現していることか。歳時記や季語辞典はぱらぱらとページをめくっているだけでもなるほどと思い、そのときどきにどんな言葉が目に留まり、自分に飛び込んでくるのかもおもしろい。俳句を知る以前の自分とは明らかに違っているし、絵だって変わっているはずです。これからも楽しみね」

古稀を迎え、還暦で始めた俳句と新聞に連載していた銅版画を組み合わせた一冊を上梓。俳句と絵の合わせの妙も、また楽しい。『山猫画句(がっく)帖』2,200円(文化出版局)

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『クウネル』No.118掲載

私の人生を変えた本

  • 発売日 : 2022年11月18日
  • 価格 : 980円(税込) (税込)

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