レトロ喫茶のプリンはかためがおいしい。吉祥寺の老舗喫茶店『ゆりあぺむぺる』で「プリ活」

ゆりあぺむぺるプリン

小休憩や読書、コーヒーを飲みに、とりあえず現実逃避…というときに向かう先はいろいろ。その日の気分にもよりますが、〈クウネル・サロン〉プレミアムメンバー松永加奈さんは、喫茶店に向かうのだそうです。そこで必ず頼むのは、みんな大好きプリンです。


見渡せばあちこちに「カフェ」があり、明るく開放的な空間、シンプルからレトロポップ、北欧風まで「おしゃれ」と話題になる内装もさまざま。どこも素敵だなと思う一方、外出先で休憩するときはまず 「喫茶店」 を探します(できれば古い昔ながらの)。使い込まれた木のテーブルと椅子のしっくりくる感じ、ほの暗い店内に小さーく流れる音楽や会話のさざめき、長い年月が積み重なってできた独特の空間。その中で適度な「放置感」を味わいながら1人で過ごす時間を、心地いいなと思います。


1976年創業の喫茶店
『ゆりあぺむぺる』


吉祥寺駅の南口を出て西へ少し歩くと、喫茶店『ゆりあぺむぺる』があります。通り沿いには古いビルが立ち並び、あらゆるお店がぎゅうぎゅうとひしめく中、『ゆりあぺむぺる』の店構えは少し別世界のような佇まい。でも通りに完璧に溶け込んでいるのは、1976年創業という歴史ならでは。周りがどんどん変わっていくさまを、じーっと見つめてきたであろう貫禄があります。

吉祥寺駅公園口通り
『ゆりあぺむぺる』がある吉祥寺駅南側の公園口通り。さまざまな店舗がぎっしりと並び、昔からなんとなく歩行者専用っぽく見えるのですが、バスがガンガン走るので要注意。
ゆりあぺむぺる外観
うっかり通り過ぎてしまうくらい街に溶け込んでいる『ゆりあぺむぺる』。周辺はかなり変わってもここだけは45年以上変わらぬ佇まい。
ゆりあぺむぺるアイコン
店名は宮沢賢治の詩集『春と修羅』の一編に登場する「ユリア」と「ペムペル」という名前から 採ったものだそう。
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セピアカラーの空間は
ヨーロピアンな邸宅ふう


平日の夕方。黒光りした古い階段を上がると、静かに洋楽が流れる中、少し遅いお茶時間を楽しむお客さんたちの姿が。アールヌーヴォーの素敵なランプと(年代ものの)壁紙でできたセピアカラーな店内は、 花柄のクロスがかけられたテーブルや家具の設えも相まって、どことなくヨーロッパの邸宅ふう。そういえば在パリ中に、こんな雰囲気のお宅にお邪魔したことがあったなと思い出しました。

ゆりあぺむぺる店内アート
店内にはミシャやロートレックなどのポスターが。こちらは2階にあったムーランルージュの特大ポスター。
ゆりあぺむぺる階段
若干不揃いのステップとこの感じ、物語の1シーンに出てきそうな……。(2階からの様子)
ゆりあぺむぺる2階ドア横
2階ドア横の2人席に。がっちりした梁も美しいデザインの1つ。ランプのやさしい灯りが印象的。
ゆりあぺむぺる2階大テーブル
どーんと存在感のある大テーブルには、おひとりさまもグループも。たぶん時を経て、あれやこれやでこの色になったのであろう壁も、ここまでくるとアート。
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コーヒーはフレンチブレンド
おともは濃厚でなめらかなプリンを


暑かったのでアイスコーヒーと迷いつつ、芳醇な風味を求めて、ブレンドの中から「フレンチ」を。そして甘いもの甘いもの…ありました、オリジナルプリン。コーヒーとプリンは喫茶店の王道、そしてうれしくなる組み合わせ。(ちなみに音の響きがポップなせいか、偉い人もいかつい人もクールな人も、誰でも「プリン」というときの一瞬、その瞬間がかわいく見えると思うのは、私だけでしょうか?)

フレンチブレンドは口に広がるコクと香り、適度な苦みが良いバランス。これに合わせるプリンは……「生クリームとバニラビーンズを贅沢に使用」というだけあり、まったりとなめらかな舌触りは濃厚で、バニラの香りもリッチ。スプーンですくうときはハード系の質感ですが、口に入れると柔らかくクリーミーになるのは、生クリーム効果かも。しっかりとした、でも上品なプリンの甘さは、コク強めのコーヒーにぴったりです。


ゆりあぺむぺるプリンとコーヒー
この日はプリンとブレンドを。並べてみると全体の色調がレトロ。
ゆりあぺむぺるコーヒー
数種類のブレンドから選んだ「フレンチ」は酸味がなくコクがしっかり。苦みは強すぎず、個人的にとても好みの味です。
ゆりあぺむぺるプリン
長方形にカットされた手作りプリン。クリームとさくらんぼがあるとないとではお皿の華やかさが全然違うのです。
ゆりあぺむぺるクリームソーダ
実はゆりあぺむぺるのクリームソーダは、おいしさだけでなく、カラフルで種類豊富な「映え系」と話題。真っ赤な「ざくろ」は40年前からあるのだそう。
ゆりあぺむぺる2階窓側
全体のトーンはセピアカラーというか茶色というか……それも落ち着ける要因かと。窓際と一番奥の席は私にとって憧れのポジションです。(狙っているけどなかなか座れない)
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昔からある喫茶店は、たくさんの人々が通いさまざまなことが語られ、中には人知れずすごいドラマもあったかもしれません(あるに違いない)。それが積み重なって、お店のそこかしこに「みんないろいろありますよね」みたいな雰囲気があるから、誰でもなじみやすいのかな……。プリンを食べ終わり、クリームをつまみにコーヒーを飲みながら、ふとそんなことを考えたのでした。

ゆりあぺむぺる2階壁ランプ
壁の一区画を切り取ってもなかなか絵になる風情。

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