【住まいと暮らしvol.005】家づくりを通して見つけた人生に欠かせないもの―河村奈穂さん

住まいと暮らしvol.5 河村奈穂

部屋やごはん、お気に入りの道具たちを本人撮影の写真で見せていただき、バトンを繋いでいくリレー連載。奥村麻利子さん(前回はこちらより)のバトンを受けてご登場いただくのは、静岡県にある人気雑貨店「sahanji+(サハンジプラス)」のオーナー、河村奈穂さんです。

奈穂さん・暮らしのルール

住まいと暮らしvol.5 河村奈穂

1)夫婦の役割を決めない。それぞれが無理せず気持ちよく、うまく回ることが一番。
2)インテリアは生活感を排除しすぎない
3)なにかに行き詰まったら、とりあえず食べる、寝る、ひと呼吸おく

小4の息子と夫の3人で、静岡県に暮らす奈穂さん。自宅から車で30分のほどの場所でお店を営んでいます。街並みに溶け込む素敵なご自宅は、建築家の堀部安嗣さんによる設計です。最初に堀部さんの設計事務所を訪れてから竣工まで3年、そして住み始めてから約2年。家づくりを通してこれからの人生を何を大切にどう生きたいか、深く考えるようになったといいます。

「堀部さんの”記憶の継承”や”懐かしい未来”という考えに触れ、この地で生きると決めた人生の選択を改めて肯定してもらった気がして、自分の軸がどっしり定まりました。私が生まれ育ったこの街で過ごした記憶をそのまま、息子も家を通して追体験できることがいいなと思います。ステイホームのなか、心身ともに安心した気持ちで過ごせるのはこの家のおかげ。この慣れ親しんだ環境と、愛着のある家を誇りに生きていけたらと思っています」

タモ材のダイニングテーブルと椅子は、愛知県の「ふくなり」に製作を依頼したもの。「テーブルは少し足が浮いて見えるデザインで、普通に見えて普通ではないところが気に入っています」。 息子さんの勉強机、奈穂さんの仕事机にもなるため、出したものは都度片付けて、テーブルの上は常にすっきりとした状態にするようにしているそう。

リビングには、季節感を感じる花を飾って。「春にはチューリップ。花器には、カイ・フランクやヘンリー・ディーンなどデザイナーのものも愛用しています」

回遊性のあるリビング、ダイニング、キッチンは空間に奥行きが生まれ、家族が程よい距離感を保てます。「家族でくつろぎたいときも、ときには険悪なときも(笑)、それぞれの喜怒哀楽をしっかり受け止め、そっと包み込んでくれる寛容な家だと感じています」。照明はほとんど間接照明。陰影が生まれて落ち着くのだとか。「家族が寝静まったあと、ソファでごろごろしながら映画を観るのが至福の時間です」

目にして心地よい色や形の道具は、常に見える場所に置いているという奈穂さん。奥にある照明は、ジャスパーモリソン。「調光ができるので、いろいろな表情を楽しんでいます。照明を落とすと月がぽっかり浮いているような、幻想的な雰囲気になり、気に入っています」

ソファのコーナーには、奈穂さんの友人が新築祝いにプレゼントしてくれた、スエオタカヒロさんのくまが。「スエオさんの作品はかわいい過ぎず、独特な世界観が確立されていて病みつきになります。イラストはmitsouさんからプレゼントして頂いたベビーの頃の息子。家のいろいろな場所に、mitsouさんのイラストを飾っています」

建築家・堀部安嗣さんの作品集と随筆に多大なる影響を受けたという奈穂さん。「設計をお願いする以前から、素敵だなと思う家が堀部さんの設計で気になっていて、依頼を決めてからは図書館に通い詰め、過去の書物から建築雑誌、動画まで、ほとんどすべてに目を通しました」

「よい気は玄関から入ってくると聞き、玄関にはできるだけ靴を出しっぱなしにしないように心がけています」という奈穂さん。玄関マットはポルトガルの女性が、手紡ぎ手織りしているもの。シンプルで履きやすいスリッパは「CANO」のもの。サハンジプラスでも紹介しています。

2階にある円柱型の小さな空間は、家族のお気に入りの空間。「季節によって、時間によって、陽の入り方が変わり、毎日見上げても飽きることがありません。わが家はビオソーラーという空気循環システムを導入しているのですが、この空間が煙突の役割も担っていて、機能と意匠がうまく調和しています」

2階の円柱型の空間は、本読んだり、ストレッチしたり、アイロンをかけたり。家族みんなが思い思いに使っているそう。

奈穂さんが静岡が誇るお店だと語る、「百町森」で購入した絵本や児童書。「幼い頃の追体験ができる絵本は、大人にもおすすめ。息子のものというより、私の趣味となりました。小さいときに何度も読み聞かせた絵本の記憶を、大人になってふとしたときに思い出してくれたらいいなと思います」

息子さんとの生活は、新たな扉を開けてもらうこともあるという奈穂さん。「小学生男児の好みは、年々私の趣味とはかけ離れていきますが、自分の好みを押し付けることはしません。10年の年月を経てようやく男子の子育てへの免疫がつき、いろいろやりっぱなし、聞いていない、すぐ忘れる…もうガミガミ言うのは諦めました(笑)」

息子さんが生まれてからずっと一緒にいるというくまちゃん。「どんなときでも持ち歩いていました。息子はもちろん私も何度も助けられた、育児の同志のような存在です」

ジュエリーはさりげなく、個性的なものが好きだという奈穂さんのお気に入りは、「yoriko jewellery」のパールネックレスとゴールドのピアス。カジュアルな服に合わせるのが好きだそう。マーガレットのイヤリングは、80年ほど経つ古いもの。デンマークのマルグレーテ女王の生誕を記念して作られたものだとか。結婚指輪は銀座の「和光」で。

秋冬になると奈穂さんが毎日制服のように着ているのが、「chiclin(チクリン)」のカシミアウールの鹿子織ニット。「軽くて暖かく、肌触りがいい。すっきり見える優秀ニットです。シーズンが終わると丁寧に手洗いして、アイロンで整え、次のシーズンに備えます」

奈穂さんのレスキューアイテムは、「SHIGETA」のオイルと、Shimaさんが調合する香りのミスト。「好きな香りやストレッチで、自律神経を整えます。ストレッチポールは朝晩の日課。40代後半に差し掛かり、ゆらぎ世代と言われる年齢を身をもって実感するようになりました。自然療法にこだわらず、西洋医学の力も借りながら、より意識して心身の健康に目を向けるようになりました」

新たに住宅の一角に設けた小さなスペース。「子どもの成長とともに変化していく、ワーク・ライフバランスに柔軟に対応できるように設けました。今後はサテライトショップをする予定です」

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奈穂さんがバトンを渡すのは、パリでカフェ「Dreamin Man」を営む松崎裕衣さん。なんと高校生の頃から「サハンジプラス」に遊びにきていたお客さんだったそう。奈穂さんが”お菓子もファッションのセンスも抜群”と絶賛する、裕衣さんのパリでの生活、どうぞお楽しみに!(次回は10月下旬公開予定)

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