【猫沢エミさん・猫のようにしなやかに生きるヒント集③】50歳は人生の大切なターニングポイント

猫沢エミ 

ミュージシャンで文筆家・猫沢エミさんの著書『ねこしき 哀しくてもおなかは空くし、明日はちゃんとやってくる。』(TAC出版)が話題です。タイトルの”ねこしき”とは、猫沢さんのしきたりを短くしたもの。その名の通り、50歳を迎えた猫沢さんがありのままを綴った文章が、同世代の女性の共感を得ています。そんな猫沢さんの日々の暮らしへの向かい方と、自分のために作る料理のレシピをご紹介。シリーズの最後には、猫沢エミさんの特別インタビューも。

明日の自分を助けるために

50歳を迎える前に両親ともに見送ってしまった私は、50という数字よりも、人生の先達を務めてくれていた親が亡くなったときのほうがずっと、衝撃だった。長女の私は、残されたきょうだいのなかで一番の年上ということもあり、父母がいなくなった途端「次は私だ」という、あらがえないメメント・モリと向き合うことになったのだ。memento moriーラテン語で〝死を想え〞、つまり誰しもに死は当たり前のように訪れる、という警句だ。両親は死の前に立ちはだかり、私たち子どもを死の影からブロックしてくれていたのだ。その壁がなくなったとき、自分の死生観について、そしてこれからの人生について、考えざるを得なくなった。若い頃のように宵越しの金を持たず、 出逢う人は片っ端から知り合い、交流し、傷つき、立ち直る……という時間はもうない。これまで の人生で作ってきた自分なりの指針や哲学に合った人を選び、時間を大切に使って、残りの人生を気持ちよく有意義に生きていきたいとあらためて思うようになった。それは、私の細胞ひとつひとつからの呼び声だ。哀しいことなんかじゃなく、とても当たり前の自然の摂理として、私にはもう、残された時間がそれほど多くはない。

猫沢エミ ねこしき

だからこそ〝50歳〞は、とても大切な人生のターニングポイントだ。 39歳から40歳になったときのことを思い返してみる。さらに前を振り返ればまだ20代で、これから40代を生きる自分には、メメントを盛る必要はなかった。ところが、49歳から50歳になった瞬間、先を見れば60歳そして70歳 と、老年期はすぐ目の前なのだった。若い頃のようにその日暮らしもできなくなるし、ある程度先を見据えた準備も必要になる。料理の側面でもそれは表れて、常備菜や作り置きなど興味がなかったのに、いつも冷蔵庫にすぐに使えるあれこれを、自分なりに工夫して置くようになった。体の管理に無頓着だったゆえ、70代前半という若さで逝った両親の反面教師もあった。自分が病気になって苦しむのは勝手だが、まわりの人への影響や気苦労にも責任を持たねばならない。その思いは、 大病を経験して歳を重ねるたびに強くなった。自分を大切に思ってくれている人たちを哀しませることは、おとなのすることじゃないのだ。 


ロールキャベツグラタン

猫沢エミ ねこしき

材料(2皿分)

自家製ベシャメルソース…200g
ロールキャベツ…2個
生クリーム(牛乳または豆乳でも可)…30cc
ロールキャベツのスープ…50cc
塩、白胡椒…各少々
削ったハードチーズ(コンテ、グリュイエールなど味の濃いもの)…30g
(シュレッドチーズ、粉チーズでも可)
パン粉…大さじ1

作り方

1)オーブンは200℃に温めておく。ロールキャベツも軽く温めておく。
2)ベシャメルソースとロールキャベツのスープを小鍋に入れ、弱火で温めながらよく混ぜる。火を止める直前に生クリームを入れ、味をみてから塩、胡椒を好みで加える。
3)耐熱皿にロールキャベツを置き、上から2)のベシャメルソースをたっぷりかけて、削ったチーズとパン粉をのせ、オーブンで表面がきつね色になるまで13~15分ほど焼く。

※自家製ベシャメルソースとロールキャベツの作り方は、『ねこしき』でぜひご確認ください。

※本記事は『ねこしき』(TAC出版刊)からの抜粋です
次回はインタビューをお届けします。

撮影:鈴木陽介 構成:赤木真弓

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