暮らしの変化でたどり着いた、フランス人の部屋。日々暮らす家との出会いや、たどり着いた理由は人それぞれです。心地よい空間にしようと、センスを発揮し、時に手も加えるパリのマダムのリアルな部屋をご紹介します。
モンマルトルの静かな通りに面し た庭付きの一軒家。インテリアデザイナーのアンヌ・ジェイスドーフ ァーさんがこの家を見つけた時、そこ は廃墟のような状態だったそうです。
「ひどい有様でしたが、庭もあるし、 興味が湧いたので調べたところ、競売にかけられていたんです。半額とまではいきませんが、かなり安く手に入れられました。でも不法占拠の住人がいたり、落ち着くまでにはかなりの時間がかかりました」
床も腐っている状態だったので大改装が必要でした。その間、家族は友達 の家を間借りしたり、工事で完成した唯一の部屋に肩寄せあって暮らしたり。
「我が家は4年に一度、そんな状態で引っ越しをしていましたが、毎回、前の状態よりいい家にリノベイトして、 好条件で売却するのを繰り返していたので、少しずつ理想の家に住めるようになったんです。ここはかなり理想に近い家になったので、当分引っ越しはしないと思います」
庭と最上階のテラスがお気に入り。決して高級家具に囲まれた暮らしではないけれど、アンヌさんがインテリアデザイナーの手腕を発揮して、色使いが絶妙な空間に作り上げています。
「4階建てで階段が想像より大変ですが、もうこれ以上の家は見つからないかもしれません」
アンヌ・ジェイスドーファーさん
Anne Geistdoerfer/インテリアデザイナー。女性のパートナーと組んで、インテリアデザインをしている。娘2人とTVカメラマンの夫と4人暮らし。夫の家族が近所に暮らしている。http://www.doubleg.fr/
『ku:nel』2019年9月号掲載
写真 篠あゆみ/コーディネート 石坂紀子/文 今井恵