内田真美さんの代表菓子・スペシャリテ/物語編。【プリン】話題の「大きなプリン」が生まれたきっかけは?

内田真美

大切に作り続け、その作り手の代名詞ともいえるメニュー、それが「スペシャリテ」。内田さんにとっての「スペシャリテ」はプリン。ネットやSNSでも度々紹介されている「バズりスイーツ」です。今回はそのプリンレシピが誕生するまでの物語を、紹介していきます。レシピ編と併せてお楽しみください。

▼レシピ編▼
【プリン】多くの人をトリコにした大きなプリン。

プリン 内田真美

味わう人の歓声に
後押しされて。

プリン 内田真美
ダイニングの窓からは、明るい日差しが差し込む。シックな雰囲気の漂う、モノトーンの空間。器も、清々しいガラスや白が中心。とくに白い器はさまざまなニュアンスのものが多く集まっている。

誰もが、幼い頃から慣れ親しんだ味。お皿にぷるんとのった姿も どこか愛嬌があって、その完璧な姿を くずすのが惜しいと思いつつ、ひと口、 ふた口。でも、あっという間にお腹におさまって、いつだって、「もうちょっと、食べたかった」と切なくなる存在。

小さな頃の内田さんも、そんなプリンが大好きでした。みんなを笑顔にする、この気取らないおいしさ。もしも大きく作れたら、もっと喜んでくれるはず。はじめは、そんな気持ちから、 大きな型で焼きはじめました。

「これをお持ちすると、その大きさに、『わーっ』と歓声が上がります。子どもだけじゃなく、大人も無邪気に喜んでくださいます。何か集まりがあると『あのプリンが食べたい』とリクエストされることが多くなって。召し上がった方が『あのプリンはおいしかった』なんていろいろなところでおっしゃってくださるので、みなさんの期待値が上がってしまって。うれしいけれど、ちょっとドキドキします。だって、 基本的な、ごく普通のプリンですから」

プリン 内田真美
鮮やかな果物の色が、空間のアクセントに。そのまま味わったり、お菓子の材料として使ったりと、季節を感じられるコーナー。

イメージしたのは、フランス菓子〝クレーム ランヴェルセ〟のとろけるよ うな口どけ。それでいて必要なのは、型から外したときにきちんと立つ凝固 性。素材がシンプルゆえに、ちょっとした配合の違いが、完成に大きく影響します。卵とミルクの量、オーブンの 温度と時間を細かく測りながら、現在のレシピにおさまりました。

「砂糖の量は、作りはじめた頃よりも 少しずつ減っていますね。卵の量が一 般的なレシピよりも多いので、甘さは 強くなくても、そのコクで、満足感があるんだと思います。実は、生クリー ムをそのまま食べるのが苦手なんです。 そんな理由で、このプリンはホイップ クリームなどを添えなくても、プリンだけで満足できる、それでいて飽きのこない味わいを求めました」

プリン 内田真美
天井の高い開放的なキッチン。オープン棚には、銅 鍋や鋳物鍋など、日々の料理でよく使うものを選び、飾る感覚で並べている。

以前は、古典的なレシピに則ってグラニュー糖を使っていましたが、今は、より穏やかな甘さのきび砂糖に。ホイップを絞ることなく、フルーツを添えることもない、どこか懐かしさを漂わせる大きなプリン。それは幼い頃に夢見た、イメージそのままの姿です。

プリン
内田真美
表面は弾力がありながら、口に入れた途端、ふわりととろける口どけ。ちょうどよい濃度に仕上げられたカラメルは、型から出すとほどよく流れ、それでいてプリンの上にもしっかり残る。

内田真美さんのお菓子の集大成!
『私の家庭菓子』が話題です。

『ku:nel』2018年3月号掲載

写真 有賀 傑  / 取材・文 福山雅美 / 編集 鈴木麻子


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