【フランス流生き方1・後編】結婚せずに40年以上パートナーと。「大切な存在だけど、ひとりになれる場所も必要」

ヴァレリー ランカスター

「アムール(愛)」の国フランス。愛の形にもいろいろあり、結婚が必ずしもゴールではありません。長年連れ添いながら、自由で独立した関係を築く女性に話を伺いました。【前編はこちら】

Valérie Lancaster
ヴァレリー・ランカスター

「ギャラリー・ラファイエット」の広告イラ ストなども手がける。旅先でのスケッチが趣味。

パートナーのベルナールさんはグラフィックデザイナー。ヴァレリーさんが住む左岸とは対称的に、右岸の 18 区、モンマルトルに家を持っています。40年以上一緒にいるんですが、結婚しようと思ったことは一度もないそうで、自由な関係を続けています。

ムフタールのマルシェにはほぼ毎日買い物に出かけている。野菜も鮮魚もすべて新鮮。

最近ではヴァレリーさんの家で寝食をともにし、ベルナールさんの家をアトリエ風に使い、ふたりで仕事をしに行くことが多くなってきたそう。そんな流れがとても自然で、結果としてふたりは朝から晩まで一緒に過ごすことになります。
「仕事中はアーティストとして自分の作品に向き合っているので、長い時間を一緒に過ごしていても、お互いの存在が気になることはありません。そして近所のレストランにランチに出かけてリフレッシュ。だからけんかはぜんぜんしません。彼の言うことはとても客 観的で、納得ができることが多いし。私の両親は四六時中けんかをしていたんですけど、物質的なことで揉めることが多く、その姿は私の反面教師なんです」
仕事以外の時間には、蚤の市でアンティークの家具を一緒に探したりと、好きなものが似ているというのも、ふたりの関係が長続きしている秘訣のようです。

ダイニングテーブルと椅子。モスグリーンはヴァレリーさんの好きなカラー。エキシビションカードやイラストをクリップで留めてディスプレイ。

ヴァレリーさんは大の料理好き。週末には友人を家に招くことも多く、簡単にできて見栄えがする料理と センスのいいテーブルセッティングでもてなします。
「私たちを交え、6人ぐらいでディナーを囲むことが多いですね。ベルナールはあまり肉を好まないので、ヘルシーな野菜料理が中心。最近では政治の話をオープンに話すのはむずかしいので、何気ない日常の話題を心がけています。友人たちも個性的でインテリジェントな人が多いので、いつも楽しい時間を過ごしています」
またそれ以外の週末は、ヴァレリーさんが所有する田舎の家で、静かにゆったりと過ごす時間も大切に。
「パリから1時間ぐらいのヴェクサンにある家。ここでパリから運んだものや地元の蚤の市で見つけた家具でインテリアを考えたり、庭いじりをする時間がとても貴重です。パリのふたつの家を行き来し、週末は田舎へ。長い間ふたりで一緒にいるうち、このリズムが自然にできあがりました」

移動はメトロ。ゆっくり街歩きを楽しむ

ファッションに関しても、ヴァレリーさんにはこだわりがあります。
「ベルギーのブランドやお店が好きなので、ときどきベルナールと国境を越えて買い物に行くんです。基本的に流行を追うのはしっくりこないので、パリでは蚤の市に行く時に古着を買うぐらい。昔は祖母がジャン・パトゥのクチュリエだったので、服は全部オーダーメイドでした。今はそんな上質なものばかり身につけることはできないので、古着で質のいい物を見つけて着ています。最近はギャバジン素材や軍の放出品のミリタリー調のものなど、しっかりしていて、長く着られるものが好きなんです」

若かりし頃はベルナールさんの趣味に応え、タイトな洋服を意識して身につけていたヴァレリーさんですが、今は自分自身の着心地のよさを追求しているのだとか。長い年月を共に過ごし、お互いがベストな状況で暮らす術を見つけたヴァレリーさん。ある意味、パリジェンヌたちが憧れる、理想の未来図なのではないでしょうか。

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