【フランス流生き方1・前編】「40年以上続くパートナーとの結婚は一度も考えたことはありません」。

ヴァレリー ランカスター

「アムール(愛)」の国フランス。愛の形にもいろいろあり、結婚が必ずしもゴールではありません。長年連れ添いながら、自由で独立した関係を築く女性に話を伺いました。

Valérie Lancaster
ヴァレリー・ランカスター

「ギャラリー・ラファイエット」の広告イラ ストなども手がける。旅先でのスケッチが趣味。

「父はイラストレーター、母がデザインの仕事をしていたので、自然な流れで私の仕事も芸術的な方面に向かいました」
ヴァレリーさんは90年代にティエリー・ミュグレーやジャン=ポール・ゴルチエのクリエーションのイラストで有名になり、現在もさまざまな媒体のイラストを手がけています。
「今、住んでいる部屋はもともと家族が使っていたアトリエを、あらためて私が購入して改装したもの。当初は建物の1階にしかトイレがなく、お風呂ももちろんありませんでした。ここで暮らしながら少しずつ工事を始め、数年かかってやっと快適に暮らせる状態になりました。美術学校に通っていた頃から、かれこれ45年も住んでいることになりますね。過去には抽象画家として名のある、ジャン・デュビュッフェがアトリエを構えていたこともある、歴史的な建物なんです」

天気がいい日に友だちが集まる、ランチやディナーを楽しむテラス。

場所は5区のカルチェ・ラタン。マルシェで有名なムフタール広場の近くなので、新鮮な野菜や肉、魚などがすぐ手に入る、とても暮らしやすいアパルトマンだそう。
「私は美術学校時代に知り合ったパートナーと40年以上一緒にいるんですが、結婚しようと思ったことは一度もないんです。結婚という形をとると、どうしてもボヘミアンな暮らしが崩れてしまい、ふつうの暮らしになってしまう気がして……」

ヴァレリー ランカスター
仕事帰りにマルシェに寄り、帰宅するとそのままキッチンに立つヴァレリーさん。夕食は家でとることが多いそう

パートナーのベルナールさんはグラフィックデザイナー。ヴァレリーさんが住む左岸とは対称的に、右岸の18区、モンマルトルに家を持っています。たまにCDジャケットや本のデザインで、一緒に仕事をすることもあるそうです。
「彼との人生は、メダルの表と裏のようなパートナー生活。結婚という形はとっていませんが、いつも一緒に過ごしています。そしてお互いが独立した関係でいられることがとても重要なんです。同じ映画が好きだし、同じエキシビションを観に行きたいと思うし、旅行は必ず一緒です。お互いが別の相手に惹かれたこともないし、飽きないからマンネリもありません。でもひとりになれる場所も必要なんです。無理に何かしようとすると、うまくいかないことが多い。どんなことでも流れに任せていくと、いい形になってくると思うんです。男女の関係もそうではないかしら?」


【後編】 へ続く →

キーワード