読書や本を眺める時間をこよなく愛するフランス人。長期に休むバカンス先が、もっぱら最大の読書タイムのよう。本の世界で旅したり、他人の人生を生きたりと、おしゃれなフランス人も本の世界で想像を膨らませています。
ナタリー・レテ/Nathalie Lété
アーティスト
カラフルな作品が日本でも人気。絵本やセラミック、テキスタイル、リトグラフも。アスティエ・ド・ヴィラットとのコラボなども有名。www.nathalie-lete.com
アートへの概念を変えた、日本で出合った3冊の本
「ひとりっ子だった私は、子供の頃は本がお友だち。図書館に通うのも大好きで、ジュール・ヴェルヌやゾラ、バルザックなどを読んでいました。冒険やファンタジーが大好きで、本を通じて旅をする気持ちになっていました」ナタリー・レテさんが立っているのは、子供たちのために買った絵本や自身の絵本、そしてインスピレーションを呼び起こす本を並べたアトリエの本棚の前。一見乱雑なようで、よく見ると、視覚的な印象で本をディスプレイしているのがわかります。
「娘や息子が小さい頃、イラストがかわいい絵本を買うのが好きで、子供たちがアートに興味を持つよう、驚きがある絵本を購入していました」コロナが流行する以前は、1年に1度出張で来日していたので、東京の青山ブックセンターによく立ち寄っていたというナタリーさん。「インスピレーションの源になり、見ているだけで楽しくなる本がたくさん並んでいました。“刺青”の本など、新しいジャンルを知るという面白さもあります」仕事柄やはり気になるのが本の装丁。
購入するときはインテリアのオブジェとして本を選ぶこともあるそうです。
「リトルモアの本が大好き。紙の選び方や薄紙が重なり合うところなど、クリエイティブな装丁がフランスにはなかなかないものです」
そして数ある日本で出合ったものの中で、ナタリーさんの運命ともいうべき本が日比野克彦さんのアート作品集。「アートスクールの学生時代、交換留学生として初めて日本に行ったときに本屋で出合い、私のアート感が変わりました。ダンボールを子供のように組み立てて遊びながら、楽しいことがアートになると気づかされた本です」
10年以上前に出合ったグラフィックデザイナー菊地敦己さんの作品集もアート魂を揺さぶられた本のひとつ。カラフルで楽しいナタリーさんの作品の原点が、日本のアーティストたちの作品集によって刺激されたとは、なんともうれしい話です。そして本は仕事のためだけのものではありません。「週末や夜、とくに田舎の家のソファに座り、暖炉にあたりながら本を読んだり、アート集を眺めるのは最高の時間。小説を読むのは、集中できる地下鉄や列車の中が多いですね」
アート本以外では、ステファン・ツヴァイクや日系カナダ人作家のアキ・シマザキの本も好きだそう。「漫画も読みますよ。『Le Gourmet Solitaire(孤独のグルメ)』は美味しそうな料理で日本を思い出し、ノスタルジックな気持ちになります」
『クウネル』2023年1月号掲載
写真/篠あゆみ、コーディネート/石坂のりこ、鈴木ひろこ、文/今井恵