【本が教えてくれた憧れの人の生き方】作家・中野京子さんが感嘆したマリーアントワネットの生涯

書籍『マリーアントワネット(角川文庫)』上下巻の表紙

若き日に心を震わせられた詩の一節。大人になってより深まった書き手の心情への共感。本を通じた敬愛すべき女性との出会いは心の宝物です。6人の女性たちに、それぞれの先達への思いを聞きました。

中野京子が感嘆した、マリー・アントワネットの変化

マリーアントワネットの肖像画
マリー・アントワネット
ウィーンのハプスブルク家に生まれ、フランスのルイ16世の妃となる。 左は本書上巻より、F・ヴァーゲンシェーンによる若き日の肖像画。

もともとは平凡なハプスブルク家のお姫さまに過ぎなかったマリー・アントワネット。踊ることや着飾ることが大好きだった美少女がフランス国王の妃となり、そしてフランス革命という世界史的な大変革に遭遇して、王ともども残忍に処刑されて37歳の若さでこの世を去る。誰もが知っている悲劇の女王です。

シュテファン・ツヴァイクが記したこの長尺の伝記は、マリーの波乱に満ちた人生を、その少女時代から断頭台に消える最期まで、まるでルポルタージュのように、スリリングに描いていきます。この波乱に満ちた壮大な歴史絵巻の訳者でもある中野京子さんは、彼女の変化に注目します。

書籍『マリーアントワネット(角川文庫)』上下巻の表紙
マリー・アントワネット』(上・下)シュテファン・ツヴァイク 訳/中野京子
オーストリア・ウィーン生まれのユダヤ系作家、ツヴァイクが1932年に発表。「小説家だから形容がうまい、歴史家とは違う文章です」と中野さん。上660円、下748円(角川文庫)

「読書もしないし、字も下手。自分について考えたこともなかったような平凡な女性が、歴史のものすごい激動のなかで、初めて自分とは何者であるかを考えるようになる。そしてこの悲劇にふさわしい女性に変わっていったんですね。人は運命に対峙し、変わることができる。みじめな最期だったけれど、毅然とした態度によって、燦然と輝いた『忘れえぬ王妃』なんです」

『クウネル』2023年1月号掲載

写真/久々江満(本)、取材・文/石毛幸子、丸山貴未子

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