新たな本に出合いたいけれど、何を選べばよいか分からない。そんな時は本のプロである書店員さんに聞いてみるのも手。直木賞作家から書店員歴40年以上のベテランまで、個性的な書店オーナー&書店員さんに「推しの本」を取材しました。
今村翔吾/いまむらしょうご
1984年京都府生まれ、滋賀県在住。ダンスインストラクター、作曲家などを経て作家デビュー。2022年『塞王の楯』で第166回直木三十五賞受賞。
本が結ぶ縁や出会いを大切に直木賞作家が町の書店を継承
直木賞作家の今村翔吾さんが、廃業が危ぶまれた大阪・箕面市の書店『きのしたブックセンター』を受け継いだのは昨年11月のこと。
「当初は断る予定だったのですが、店舗を見学に行った時、小学二年生くらいの女の子がおばあちゃんと絵本を選んでいたんです。ここがなくなったら彼女にとっての『思い出の本屋』もなくなってしまう。それは悲しいなと思ったのがきっかけです」
今年1月の直木賞の受賞スピーチでは全国の書店にお礼参りをしたいと宣言。「まつり旅」と称し、約4ヵ月かけて車でまわった全国の書店は270箇所以上。原動力となったのは、地方の書店を盛り上げたいという思いです。「旅を通して撤退を余儀なくされている書店の現実を知る一方、書店の役割や必要性を再認識しました」
本が大好きで小学校高学年頃から年間約150冊読んできたという今村さん。作家として多忙な今は読書量は減ったものの、これまでの読書歴で培った知識が貯金になっていると語ります。「読書を通して一度インプットした知識は消えることはなく、新たな本を読むことで化学反応が起き、さらなる気づきや学びへとつながります。
今回は時代小説を中心に選書しましたが、人間には千年、二千年と時代を超えて変わらないこともあれば失っていることもある。我々は日本人特有の良さや人間として大切なことを失っていないか。そんな気づきを得られるのが、時代小説の醍醐味だと思っています」
きのしたブックセンター
住:大阪府箕面市箕面6-4-28
電:072-722-1915
営:11:00~20:00(土日祝~18:00)
休:無休
『クウネル』2023年1月号掲載
編集・文/吾妻枝里子