〈クウネル・サロン〉プレミアムメンバーの那須明美さんはケア・マネージャー歴20年と、介護の現場の大ベテラン。介護世代でもある「マチュア世代」のために、月に一回のペースで介護のお話をしていただきます。
あの手この手で「薬の飲み忘れ」を解決
年を重ねると体のあちこちにガタがきて、内科をはじめ整形外科や眼科など、いくつもの病院や診療科にお世話になることが多くなります。結果、それぞれの受診先から処方される薬も増える一方。朝・昼・晩、食前・食後に就寝前と、その仕分けだけでも大変な作業です。そこで那須さんが負担軽減の手始めとしてオススメするのが薬の一包化。
自宅近辺にかかりつけ薬局があると便利
「薬が出ると、ついそれぞれの受診先近くの薬局に処方箋を出しがちですが、できれば“かかりつけ薬局”を決めておくと何かと便利です。たくさんの薬が出ている場合は“朝食後”“夕食後”など服薬のタイミングごとにまとめて一包化してもらえます。日付などの印字もしてもらえるので、飲み忘れはもちろん、危険な重複服用を防ぐ手立てにもなります」
薬が余りだしたら服薬自己管理ができていないサイン
「高齢世帯や独居などのケースではきちんと服薬できていない事例も少なくありません。健康に直結する重要な問題ですが、訪問看護などの医療系サービスが入っていないお宅では、実はその確認が結構難しいんです。『薬ちゃんと飲めてますか?』とストレートに聞いて、『大丈夫です!』と言われてしまえばそれまで(笑)。そうならないように『薬余ってませんか?』『余ってたら残薬調整できますよ』なんて遠回しに確認するようにしています。
飲み忘れ防止のためにお薬カレンダーを利用する人も多いですし、なかには薬の殻はゴミ箱に捨てずに、いったん別の入れ物に捨てて不安なときは確認するなど、自分で工夫している方もいます。
もし服薬がちゃんとできていないようなら家族や主治医につなぎます。生活リズムがずれてしまい昼食後の薬が飲めていないとか、朝食後は忘れないのに夕食後は飲み忘れが多いといったケースなら、薬を調整して服薬のタイミングを変更してもらうこともできます」
訪問看護・介護を利用して上手に内服管理
「薬の仕分けをご自身で行うのが難しそうなら、訪問看護による内服管理を提案することも。看護師が訪問して1週間分の薬をカレンダーにセットしてくれます。さらに独居や家族が日中不在のケースで、薬箱やカレンダーにセットされていても飲み忘れがある場合は、訪問介護の定期巡回による内服の促しも可能です。服薬時間に合わせてヘルパーが訪問し、声かけや内服確認を行います」
薬剤師の訪問サービスや服薬支援ロボの助けを借りても
「意外と知られていないのが薬剤師による訪問サービスです。薬の仕分けや服用が適切にできていない場合に、医師に相談して処方箋に指示してもらえば薬剤師が定期的に訪問してカレンダーへのセットや服薬状況の把握をしてくれます。その際に利用者や家族に薬に関する説明をしてくれたり、体調変化の観察で薬の有効性や副作用の評価をして、情報の共有ができるのもメリットです。
まだ数は多くないですが、薬局によっては服薬支援ロボを貸し出しているところもあります。まずは薬剤師が訪問して1週間分の薬を機械にセット。毎日お薬の時間になると画面と音声でアナウンスしてくれ、ボタンを押すと薬が出てきます。取り出したあとはボタンを押しても薬はもう出てこないので、飲み過ぎ防止にもなります。ただこれはその操作を理解できる人に限られますが、服薬管理の今後の一手にはなりそうです」
取材・文/佐々木信子(tampopo組)