〈クウネル・サロン〉プレミアムメンバーの那須明美さんはケア・マネージャー歴20年と、介護の現場の大ベテラン。介護世代でもある「マチュア世代」のために、月に一回のペースで介護のお話をしていただきます。
はじまりは小さな違和感から。
ふとした瞬間に照明の壁面スイッチの位置がわからなくなったり、冷蔵庫に同じものがいくつも入っていたり……。それまで普通に暮らせていた親や配偶者(時には自分自身?)の言動に異変を感じ取ったとき、どうすればいいのか戸惑う人も少なくありません。
「そんなとき、まずは取っ掛かりとして近くの地域包括支援センターに相談してみるといいですよ」と、那須さんはアドバイス。
病院よりもハードル低め。気軽に利用できる地域包括支援センターで相談
「介護に直面している人以外にはなじみが薄いかもしれませんが、地域包括支援センターは『住みなれた地域で高齢者の暮らしを支えていきましょう』という考えのもと2005年に創設されました。相談窓口があり、保健師や社会福祉士などの専門職が対応してくれます。
地域交流の場でもあり、さまざまな団体が主催する体操教室や認知症カフェなどがあり、そこに参加するだけでもいろんな情報が得られます。また認知症相談医による相談会や講演会もあり、病院に行くよりもハードルが低いので最初の1歩としておすすめ。回覧板や区報など自治体の広報紙でも活動内容や予定が発信されています」
認知症を早期に発見し、治療に結びつけるために
歳をとればだれだって物忘れが増えてくるもの。ただそれが老化による自然な現象なのか、認知症という病に起因するものかは専門医のもとで検査をして見分ける必要があります。
「認知症と一口に言っても、アルツハイマー型や脳血管性、レビー小体型などのタイプがあり、治療も異なります。今は物忘れ外来が併設された病院も多く、脳の画像診断も受けられるので、認知症を疑ったら本人やご家族に受診を提案することもあります」
「とはいえデリケートな問題ですから、『頭の中を検査することは滅多にないし、人間ドック感覚で一度見てもらうのもいいですよ』とか『もし脳に変化があるなら、発見が早ければ早いほど適切な治療ができるんです』などと、できるだけ普段の会話の中で何気なく話すように心がけています」
受診を拒むケースには「先生」の力を借りる手も
「ただ初期の段階では本人に自覚と拒否反応とが同居していて、受診の同意を得るのが難しい場合もあります。とくに男性では社会的地位があったり、これまで頑張ってきた分、病を認めたくない方は少なくないですね」
「以前担当したケースでは、パーキンソン病で神経内科にかかっていた奥様を1人で介護するご主人に認知症の疑いが出てきたことがありました。物忘れがひどくなり、でもプライドの高い方なのでそれを受け入れられずに『聞いてない』と怒りだしたり、逆ギレしたり。結局、奥様の主治医に相談して物忘れ外来の受診につながりました。自治体によっては保健所を通して医師が訪問してくれることもありますし、当人のかかりつけの先生から説明してもらうのもひとつの手だと思います」
取材・文/佐々木信子(tampopo組)