50代のクウネル世代にとって、今後の資産形成は重要な課題。「投資」についても考えている方が多いと思います。そもそも投資とは?『僕が考える投資について』(祥伝社)を上梓した松浦弥太郎さんの、投資についての明快で健やかなアプローチをご紹介します。そこで見つかるのは、自分の価値を高め、豊かに生きるためのヒントです。前回記事・「発明を発見することは自分だけの宝物になります」に引き続きシリーズ第3回になります。
不安のある時代のお金の使い方
今は高度経済成長期のような勢いのある時代でもなければ、一般的なルートに乗れば安心して寿命をまっとうできる時代でもありません。
そして2020年からは、すべての人が等しく、未知のウイルスとの戦いを強いられています。経済的に大変な思いをされている方も、たくさんいらっしゃることでしょう。
そんな不安のあるときこそ、「お金の使い方」がものを言う。僕はそう強く思います。ここでは、収入が減っているとき、仕事の先行きが不透明になったときについてお話ししましょう。
お金に関して不安になったとき、実際に入ってくるお金が減ったときにどうすればいいかというと、最初に行なうべきことは「倹約」です。切り詰められるもの、もしくはなくてもいいなと思える支出を削っていく。まずは1〜2カ月を目安に、自分の生活にかかわる支出をすべて書き出してみましょう。そして、余分に出ていっているお金をせき止めるのです。
といっても、あまりストイックになると、それがストレスを生みますから、「できるだけ削る」という意識で大丈夫です。あらためて支出を書き出すことで、もうすでに現実と向き合うことはできているはず。危機感を持つだけでも日々の意識は変わります。
倹約を始めるときには気をつけていただきたいことがあります。それは決してお金の動きを止めないことです。お金を動かす量を減らしたとしても、その状況におけるベストなお金の「使い方」を見つけること。
つまり、「消費」は適切か、「浪費」していないかをチェックして倹約に努めながら、たとえどれだけ苦しくても「自分への投資」をゼロにしてはならないということです。
振り返ってみると、僕はどんなに収入が少なかったときも自分への投資はつづけていました。旅をつづけ、本を読み、人と出会ってきました。貯金はせずに、投資にすべてを注いで過ごしていたと言っていいかもしれません。その日々が忘れたころに結果としてあらわれ、未来の自分を助けてくれたわけですね。投資のリターンとして自分が成長し、少しずつ、お金で苦労することも減っていったのです。
お金の動かし方とその量を決めたら、今の苦しい状況が1年つづくと想定して、収支はどのようになるのか計算していきます。
生活はやっていけそうか。出ていくお金のほうが多く、赤字になってしまう場合、月々どれくらいマイナスが生じるのか。これまでの貯蓄でカバーできそうか。あるいは所有している金融資産を現金化するのか。この状況は、待てば過ぎるのか、自分で行動を起こして変化を起こさなければならないのか。
こうした問題をひとつずつ、しっかり検討していきます。
この作業は、収入が減ることがわかったら、できるだけ早く取りかかりましょう。わからない未来に備えることは大変ですが、わかっている未来に備えることは簡単です。
数字から逃げずに早めにたしかめることのメリットは、不安にとりつかれずにすむこと。また、傷が浅いうちにすばやく対処できることです。お金の問題は、すぐに病院に行けばあっという間に治ったのに、「きっと大丈夫。なんとかなる」とたかをくくっているうちに重症化してしまう病気と似ています。
こんな時代だからこそ、何か悪いことが起こったときこそ、冷静に、早めに。後手にならない。この鉄則を忘れないようにしてください。
イラスト/ミヤタタカシ
※本記事は『僕が考える投資について』(祥伝社刊)からの抜粋です。
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